Google傘下の英ベンチャー企業が開発した人工知能「アルファ碁」が世界トッププロ棋士のイ・セドル九段(韓国)に勝利するなど、何かと話題の人工知能。
研究者らが今取り組んでいるのは、「小説をつくる人工知能」の開発だ。
3月21日、ショートショートの文学賞「星新一賞」に応募し、一次審査を通ったという「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」の発表会が開かれた。
次は「感性」へのチャレンジ
人工知能研究者にとって、アルファ碁がイ・セドル九段に勝利したことは大きな衝撃だった。対戦前には「イ・セドルが有利」と予測していた公立はこだて未来大学教授の松原仁氏は、「ショックですよ。もう研究としては終わってしまいました」と話す。
これまでにチェス、オセロ、将棋でコンピュータは人に勝っているが、囲碁はボードゲームとしてさらに難易度が高く、人間を超えるのはまだあと10年かかると見られていたからだ。
とはいえ、決まったルールに従って与えられた問題を解く囲碁などのゲームは、むしろ人よりも人工知能のほうが得意な分野なのかもしれない。
「これまでの人工知能研究では、難しい問題を解く人工知能を作るという問題解決型のテーマを設定していました。そのテーマとして30年以上コンピュータ将棋の研究をしていたのですが、名人に勝つという目標を達成してしまいました。そこで、これまで難しくてできないと見られていた感性にチャレンジしようと思ったのです」
こうして松原氏が中心となって、2012年から、小説をつくる人工知能を開発するプロジェクトが開始された。このプロジェクトでは、星新一のショートショート全編を分析し、エッセイなどに書かれたアイデア発想法を参考にして、人工知能に面白いショートショートを創作させることを目指している。目標は文学賞への入選だ。