普天間基地の辺野古移設を巡る沖縄県と政府の対立。正直、僕は世間一般のニュースをきちんと追えているわけではないのだが、沖縄県民の民意を反映させて、辺野古移設を許可する効力を一時取り消したニュースには、率直に「凄いな」という感想を抱いた。
原発の問題にしてもそうだが、国という巨大な存在を前にして、「No」と強く突きつけることのできる地方公共団体は多くはないはずだ。
おそらく舞台裏では、恫喝や懐柔などが渦巻いているであろう世界にあって、民意を第一としてはっきりと「No」を突きつけた首長の決断と行動は、素晴らしいものだと思う。
そこに信念があれば、どんな過程をたどろうとも、受け入れられることがある。たとえ誤解されようとも、たとえ批判されようとも、正しいと思ったことを貫き通す。そんな強さを感じさせてくれる3作品です。
何が「正義」で何が「悪」なのか
『孤狼の血』(柚月裕子、角川書店)
日岡秀一は、機動隊から捜査二課に配属された。暴力団係だ。しかも、抗争事件が頻発する広島の呉原で。
その呉原東署の捜査二課に、県内外にその名を轟かせる凄腕のマル暴刑事・大上がいる。大上班に配属された日岡は、初日から「あそこのヤクザに絡んでこい」と命じられる。
意味が分からない。それからも大上は、”スレスレ”なんて生易しいものではない、れっきとした違法捜査を繰り返す。日岡の目には、大上の行為は、暴力団と持ちつ持たれつの関係、はっきりと言えば癒着しているように見えた。
しかしその一方で大上は、善良な市民に対しては実に親身に接するのだ。大上は、あくどいこともするし、違法捜査も繰り返すが、しかし「市民を暴力団から守る」という一点においては誰にも負けない。次第に日岡は、大上のやり方に違和感を覚えなくなっていく。