毎日の食卓に欠かせない野菜。土の付いた野菜は、「鮮度がいい」とか「風味がいい」などのイメージで捉えられがちだが、はたしてそれは本当なのだろうか。
「土が付いたままでも大丈夫」とテレビは言うが・・・
「有機野菜だから土が付いたまま食べても大丈夫なんです」
ある日のテレビから聞こえた言葉に筆者は耳を疑った。その番組では、自分の健康を気遣う消費者が、食生活を紹介していたように思う。
「土付き野菜は鮮度がいい」とか、「土が付いている野菜のほうが風味や栄養が逃げない」というイメージもある。でも、土が衣服に付けば汚れるし、土の付いた手はよく洗う。いくら有機野菜でも、「土は汚いもの」が常識ではないだろうか。
地面を覆う土は、岩石のかけらや粘土、植物などの死がいが混ざったものである。岩石が風化してできたかけらが積み重なり、そこへ火山灰などから溶け出した無機物が反応して粘土となる。そこに植物が生え、小動物が生きる。すみついた微生物は植物や小動物の死がいや排泄物を分解し、「腐植」と呼ばれる有機物をつくる。これらの物質が反応しあって土独特の構造がつくられる。
土は気候や地形、生物の影響を受け、有機物と無機物が組み合わさって長い時間かけて出来上がったものである。農業でいう「土づくり」とは、耕し、肥料を入れるなどの手をほどこすことで土の性質を変え、植物の生育に適した環境にすることだ。ちなみに「土」は一般用語であり、農業用語では「土壌」とよばれる。「壌」には「柔らかな」とか、「肥えた」などの意味がある。
土の中には病原菌や未知の微生物がたくさん
土は生態系や植物の基盤となる。生物に栄養と居場所を与えるので、多く種類の生物が集まっている。ミミズやダニのような土壌動物のほかに、土1グラムあたり1億以上もの微生物がいるといわれる。
昨年ノーベル賞を受賞した北里大学特別栄誉教授の大村智氏がゴルフ場の土から有用微生物をみつけた話は記憶に新しいが、じつは、土の中にいる微生物は有用菌ばかりでない。