原油価格の下落がサウジアラビアの経済を直撃している。高層ビルが建つサウジアラビア第2の都市、ジェッダ(写真はイメージ)

 1月11日のニューヨーク商業取引所のWTI原油先物価格は、中国経済の先行き不安を背景にした売りに歯止めがかからず、一時1バレル=30ドル台を付けた。終値も同31.41ドルと2003年5月以来の安値となった(12日には一時、同30ドル割れとなった)。

 中国上海株式市場の下落につられる形で暴落した原油相場だが、2016年に入り需要減退が材料視される傾向が強くなってきた。市場関係者は「中国経済の減速がガソリンやデイーゼル油の需要減少につながるかどうか」に注目している(2016年1月8日付ブルームバーグ)。

 中国政府は、年末の原油価格の値下がりにもかかわらず、大気汚染防止の観点から国内の石油製品価格を据え置いており、景気全般の冷え込みが強まる中で中国の原油需要は今後先細りしていくだろう。

 北朝鮮が1月6日に実施した核実験も中国経済に暗い影を投げかけている。中国政府は「事前通告はなかった」としているが、1月10日付大紀元によれば、「中国は2015年12月に派遣団を北朝鮮に送り核実験の中止を求めていた」という。「1月4日の上海株式市場の暴落は、『金正恩第1書記が前日に核実験実施に関する最終指令を出した』との情報が流れたためだ」との憶測もある。1月11日に米ムーデイーズが「北朝鮮の崩壊は核実験よりも深刻な脅威となる」と警告したように、朝鮮半島の地政学的リスクの高まりが、中国をはじめ東アジア全体の金融市場に悪影響を及ぼすことは間違いない。

 OPECの原油バスケット価格は既に1バレル30ドルを割り込んでおり、原油市場は底値が見えない状況にある。米バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチは「同20ドル割れの下向きリスクが高まっている」との見方を示したが、英スタンダード・チャータード銀行はさらに悲観的で「同10ドルまで下落する可能性がある」とした。