3回目までの核実験データから明らかなように、北朝鮮は核実験を重ねるごとに、出力を増大させてきており、3回ともプルトニウム型原爆であった可能性が高いとみられる。ただし、3回目で濃縮ウランが使われなかった確証はないと言えよう。
4回目の核実験については、2015年からその兆候が見られた。韓国の情報機関、国家情報院は昨年10月20日、国会情報委員会による国政監査で、「(北朝鮮の)寧辺(ニョンビョン)にある原子炉が持続的に稼働」しており、北朝鮮が4回目の核実験を「準備している」との見方を示したが、実施時期は「差し迫ってはいない」とみていた*3。
しかし北朝鮮は、前述した、昨年12月の金正恩による水爆保有宣言に続き、今年1月6日、事前通告なしに4度目の核実験を行い、「初めての水爆実験が成功裏に実施された」との政府声明を発表した。
なお、核爆発によるとみられる地震波が観測されたが、その強度から爆発の規模は3回目よりも小さく、韓国国家情報院は1月6日、本来の水爆の実験ではなく、「加速型」原爆だった可能性を指摘している。
本来の水爆は、核分裂、核融合、核分裂と3段階の核反応を利用し、数百キロトンからメガトン級の大出力を発生させる。
すなわち、水爆では以下の3段階の核反応を利用する。
(1)1段階目としてプルトニウム239の「加速型」原爆を起爆させる。
(2)核分裂から発生したX線をマユ型の反射材で反射させて、2段目の重水素化リチウムに集中して核融合反応を起こさせる。
(3)核融合エネルギーを利用して3段目のウラン238に核分裂を起こさせる。
今回の実験で使われたのは、プルトニウム単独またはプルトニウムと濃縮ウランを組み合わせて使用し、核分裂物質の弾芯の中心部に重水素などの少量の核融合物質を起爆直前に封入して核融合を起こし、核融合で発生した中性子により威力を5倍程度に強化する、2段階式の「強化型」原爆の可能性がある。
今回の核実験では、部分的に核融合を利用しているとしても、反射材を使用せず、本来の水爆とは構造や原理が異なる2段階式のものであろう。効率は悪く威力も弱いが、より簡単な構造で、技術的に製造も容易になる。
その根拠の1つが、爆発威力が水爆にしては小さすぎることである。
韓国の国家情報院は6日、爆発の規模が、2013年2月の3回目の核実験の際よりも小さい6.0キロトンだったと報告している。3回目より出力が下回ったことは、本来の水爆ではないうえ、技術的に失敗したことを示唆している。
核融合物質を封入する最適のタイミングや量を確認するには5~6回は核実験を繰り返す必要があり、「加速型」原爆を完成するためだけでも、北朝鮮は今後少なくとも数回は核実験を繰り返さねばならないであろう。北朝鮮は、堅固な政治的意思のもと、着実に核兵器開発を進めている。
さらに、後述するように、核弾頭を小型化し、メガトン級の出力を持つ、信頼性のある実用的な本来の「水爆型」核弾頭にするには、さらなる核実験が必要不可欠である。北朝鮮が金正恩体制のもと水爆完成を目指すとすれば、今後も核実験は繰り返し実施され、その頻度は増加する可能性が高い。
*3=『産経ニュース』2015年10月20日。