北朝鮮は2016年1月6日、事前通告なしに4度目の核実験を行い、「初めての水爆実験が成功裏に実施された」との政府声明を発表した。昨年12月10日には、金正恩第一書記の、北朝鮮が「水爆保有国になった」との発言が伝えられている。
それに先立つ昨年10月10日の朝鮮労働党創建60周年記念日の軍事パレードでは、米本土にも届くとされる大陸間弾道ミサイル(ICBM)「KN08」が2013年に続き登場し、金正恩第一書記は、「米帝国主義者が望むいかなる形態の戦争にも対処できる」と豪語している。
また北朝鮮は昨年5月9日、潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)の発射試験に初めて成功したと公表している。その後昨年11月の2度目の発射試験には失敗し、12月にも試験を行ったとみられている。
今年1月の「新年の辞」で金正恩第一書記は、「多様な攻撃手段を開発、生産しなければならない」と強調し、SLBMの開発を進める意向を示している。
このように、昨年から開発、配備が加速している兆候が相次いでいる北朝鮮の核開発能力の実態は、どのように評価でき、今後どのように推移するのであろうか。またそれらの能力に基づき、どのような核戦略を北朝鮮は採ろうとしているのであろうか。
1 これまでの北朝鮮の核実験とその水準
これまで北朝鮮は、2006年、09年、13年、16年の4回、核実験を行っている。いずれも豊渓里(プンゲリ)の地下核実験場で行われた。
各核実験の出力と種類について、1回目は未成熟爆発に終わったとの見方もあり、1キロトン前後のプルトニウム型、2回目は4キロトン前後のプルトニウム型とみられ、3回目については、地下1キロ程度の深部で行われたとみられている*1。
3回目の実験の出力については、日本気象協会などによる地震波の解析によれば、10キロトン程度と推定されている。
また、核実験から2か月を経過した4月8~9日にかけて、高崎観測所で捕集された大気試料から通常の放射能濃度の変動範囲を超える2種類の放射性キセノン同位体が同時に検出された。
シミュレーションの結果、プルトニウム239の純度が100%と仮定した10キロトンのプルトニウム型核兵器による、これらの同位体の放射能比の時間変化の理論的推定値と、観測値の間に「大きなずれはなかった」。
このことから、「観測されたキセノンは2月の核実験により地下に閉じ込められていた放射性キセノンが何らかの原因により放出された可能性を強く示唆している」。ただし、ウラン型とプルトニウム型の上記同位体の時間変化は、核分裂後の初期を除き、値の差が小さい*2。
したがって3回目の核実験では、出力10キロトン程度のプルトニウム型核原爆の核爆発が生じた可能性が高いとみられるが、濃縮ウランが使われたかどうかについては、時間が経過したサンプルしかなく、明確にはなっていない。
*1=USGS Earthquake Hazards Program (2009-05-26). "Magnitude 4.7--North Korea". USGS. Retrieved January 20, 2014.
*2=木島祐一、山本洋一、小田哲三(独)日本原子力研究開発機構『包括的核実験禁止条約(CTBT)に関連するJAEAにおける最近の活動』、2013年度核物質管理学会(Institute of Nuclear Materials Management: INMM)日本支部発表論文。