3 2014年末現在の北朝鮮の核兵器能力

 2014年末の時点で北朝鮮が保有している分離されたプルトニウムの平均的な量は約32キログラムとみられている。

 これは、寧辺にある核科学研究センターの出力5メガワット、総熱出力約20メガワットの原子炉の、稼働開始が1986年であり、最近改修が行われた。この炉は長年稼働しており、炉内から使用済み燃料棒を2年から4年で取り出して処理しなければならない。

 北朝鮮は現在、この原子炉に隣接して、熱出力100メガワットの実験用軽水炉を建設中であり、2015年または16年に稼働を始める可能性がある。

 この型の炉は民生用であり、使用済み燃料には低濃縮ウランが含まれている。寧辺の放射線化学研究所は、軽水炉の使用済み燃料棒から効率的にプルトニウムを分離できる設計にはなっていない。民生用の軽水炉から兵器級のプルトニウムを生産するのは困難であろう。

 北朝鮮が公式に表明してきた核爆弾は、プルトニウム型である。その開発は1980年代から始められた。北朝鮮の核兵器について知られていることは極めて限られているが、ノドンには、信頼性は低いものの核弾頭を搭載することができる模様である。

 核の兵器化について北朝鮮は20年以上前から取り組んでいる。1990年代にはA.Q. カーンのネットワークから、それ以前は、パキスタンが80年代に行ったように中国から、核兵器の設計図を手に入れたとみられる。

 このような長期にわたる開発により、ノドン以外にICBMにも核弾頭が搭載可能かもしれない。ただし、弾頭の大気圏への再突入試験が行われていないなどの理由で、信頼性は低いであろう。

 また北朝鮮はプルトニウムの蓄積量が限られているため、より少ないプルトニウムで核分裂を起こさせるための開発を進めてきた。

 マンハッタン計画の長崎型原爆では6キログラムのプルトニウムが使われた。北朝鮮は2006年の核実験では、わずか2キログラムのプルトニウムを使用したと表明している。

 2014年末に北朝鮮が保有するプルトニウム型原爆の数を見積もるにあたり、1発当たりに使用するプルトニウム量は2キロから5キロの中間値をとることとすると、上記のプルトニウム保有量から、8~11発のプルトニウム型原爆分の量を保有していることになる。

 しかし実際には、プルトニウムの一部は予備、地下核実験、新型核爆弾の開発などに使用され、核爆弾に使用できるのは7割程度と見積もられる。従って、2014年末での北朝鮮のプルトニウム型原爆の保有数は、6~8発とみられる。

 兵器級濃縮ウランの保有量は、保有する遠心分離機の数、性能と稼働率、5メガワットのウラン濃縮工場以外のウラン濃縮工場が存在するか否か、どの程度外国からの支援が得られるかなどの要因により、左右される。

 それらの要因を踏まえると、2通りのシナリオを描くことができる。