「更年期は女性特有のもの」そう思っている人が多いのではないだろうか。しかし、男性にも更年期はある。働き盛りの40代~50代の中高年、そして定年退職を迎える60代前後に現れる心身の不調。問題は、本人もその症状を自覚しにくいことだ。

 そこで、メンズヘルスクリニック東京の小林一広院長を訪ねた。前篇では男性型脱毛症(AGA)について紹介した。今回は、同じく小林氏のクリニックで治療が行われている男性更年期障害について話を聞く。

じわじわくる男性更年期

 更年期障害は、性ホルモンの低下によって起きる症状だ。女性の場合、閉経を境に急激に性ホルモンが変動する。この大きな変化に身体が一時的についていけなくなり、自律神経の失調等を伴い、さまざまな不調が生じる。

「女性の更年期はよく知られていて、症状も比較的分かりやすいものが多いです。性ホルモンが低下していっても、いずれはその状態に慣れてしまいますので、80歳のおばあちゃんで更年期障害が治っていないという人はいませんよね」

 これに対し、男性の場合は急激に顕著な症状は生じないものの、徐々に変化が現れる。

「加齢に伴い男性ホルモンの量が低下していくと、「男らしさ」のガス欠状態に陥ってしまいます。やる気が起きない、元気がない、意欲が出ない、ネガティブになるなど、うつ病にも近い症状が現れてきます」

 男性更年期がクローズアップされるまでは、ほとんどの症例はうつ病として扱われていたと小林氏は話す。

混同されていた更年期障害とうつ病

 うつ病は脳の神経の伝達系における障害であり、男性ホルモンの低下に伴う更年期障害とは明らかに原因が異なる。しかし、その症状が非常に似ていることから、かつては混同されていたという。