「ホルモン」というと女性ばかりがクローズアップされがちだが、男性もまた男性ホルモンの支配を大きく受けている。特に中高年になると男性ホルモンが低下し、男性特有のさまざまな症状が表れる。

 中でも外見については「薄毛」に悩む人が多く、内面については、意欲低下などうつ病とも間違われやすい「男性更年期」が挙げられる。男性の更年期については認知度が低く、自覚や実感のないまま苦しんでいる人も多い。

 そこで、メンズヘルスに特化した診療を行うメンズヘルスクリニック東京の小林一広院長の話をもとに、前篇では「男性型脱毛症(AGA)」について、後篇では「男性更年期」について紹介する。

 「薄毛」に医学的な定義なし

 日本で薄毛や抜け毛に悩む人は1200万人以上と推定されている。だが「薄毛」に医学的な定義はなく、あくまで本人の主観の問題なのだと小林氏は話す。

小林一宏氏。医療法人社団ウェルエイジング メンズヘルスクリニック東京 院長。精神保健指定医、日本臨床精神神経薬理学会専門医、特定非営利活動法人アンチエイジングネットワーク理事、特定非営利活動法人フューチャー・メディカル・ラボラトリー理事。1999年新宿に城西クリニックを開院。精神科医として皮膚科医、形成外科医と共に心身両面からの頭髪治療に力を注ぐ。2014年に丸の内に移転、男性の外見と内面を医療によってサポートするメンズヘルスクリニック東京を立ちあげた。(画像提供:メンズヘルスクリニック東京)

「どのくらい地肌が見えたら薄毛、といった薄毛に対する医学的な定義はありません。本人が気にするかどうか、捉え方次第なのです」 その線引きの難しさが余計に不安を募らせるのかもしれない。

 日本人の毛髪は頭部全体で10万本ほど。毛髪には成長期、退行期、休止期といったサイクルがあり、その周期は1本1本異なるため、通常は一斉に生えたり、抜けたりすることはない。

 休止期にある髪は全体の約1割(1万本)で、休止期が約3カ月であることから、平均すると「1日100本抜ける」という目安が出てくる。

 ただし、小林氏はこの数字が独り歩きしてしまっていると指摘する。