2015年9月24日。私は当初から予定していた、最後となる5クール目の抗がん剤投与を受けました。
その日は、朝からタレントの北斗晶さんの乳がん手術が行なわれており、夜には女優の川島なお美さんの死も伝えられるなど、ニュースが「がん」のことで持ちきりでした。
肝内胆管がんであった川島さんが抗がん剤を拒否していたことや、北斗さんが手術後の適切な時期に抗がん剤治療に臨むことを公表していたこともあり(実際には、11月4日に投与開始)、それ以降抗がん剤治療に対する様々な意見が飛び交っています。
私は、がん患者の当事者*1として、「抗がん剤治療を受けるべきかどうか?」という課題に関する意見を述べさせていただきたいと思います。
抗がん剤治療を拒否してきた2つの理由
私は、がん患者として「10年選手」です。その間に、19度の手術と5度の放射線治療を経験し、そして今回、初めての抗がん剤治療を受けたわけです。
普通なら、最初の手術の後に補助的療法として抗がん剤治療を受けるのではないか? と不思議に思われた方もいらっしゃるのではないかと思います。
実は、私も川島さん同様、否、川島さんよりも長い「10年」という期間、抗がん剤を拒否し続けてきたのです。
そんな私が、今回抗がん剤投与に至った過程をお話しします。私が10年もの間、抗がん剤治療を拒否し続けてきた理由は、大きく分けて2つあります。
1つは、私の罹患している希少がんである「肉腫(サルコーマ)」は、元々抗がん剤が効きにくいがん種であるということでした。
肉腫の中でも小児が好発年齢であるものには抗がん剤がよく効くものもありますが、私のがんである「後腹膜平滑筋肉腫」には効きにくいのが実情でした。もちろん、奏効率*2が高いがん種の方は、受けてみる価値があると考えます。
*1=筆者は、東京大学大学院経済学研究科の松井彰彦教授の「社会的障害の経済理論・実証研究」(REASE)プロジェクトメンバーとして、がんの長期療養者の当事者研究に携わっている。
*2=治療の実施後にがんが縮小したり消滅したりする患者の割合のこと。