患部を見ることもなく、「痛風ではないでしょうか」と聞く私の素人診断に痛み止めと尿酸値を下げる薬を処方してくれただけの開業医に懲りて、次に何かあったら総合病院に行ってみようと心に決めていた。
そして、その日は意外に早くやって来た。健康が取り柄と見られている自分としては悔しい気持ちでいっぱいだったが、刺さったトゲからばい菌が入ったらしく、右手中指が腫れ上がって週末の楽しみであるテニスができないとあっては、仕方なかった。
さすがは総合病院。たかがトゲなのに様々な角度から何枚もレントゲン写真を撮り、糖尿病の可能性なども考えてということで、しっかり血液検査まで受けることになった。
結局、レントゲン写真も血液検査の結果も問題はなく、腫れた指を切開して膿を出す簡単な手術を受けた。そして処置してもらった医師からは「入院にならなくて良かったねぇ」とのお言葉をいただいて帰宅した。
抜糸して元の手に復活するまで約1か月。3回ほど通院した。日本ではまさしく標準的なスタイルなのだろうが、診察予約はしていてもわずか3分間の診察を受けるのに毎回1時間以上待たされた。
たかがトゲで入院の可能性も
「やっぱり、やめときゃ良かった」と思っても後の祭り。「検査して異常がなかったことが分かっただけでもありがたいと思わねば」
そう自分に言い聞かせたが、「入院にならなくて良かったねぇ」の声が耳にこびりついて離れない。
くわばら、くわばら。よほどのことがなければしばらく病院に近づくのはやめようと心に決めた。ただしこの決心は自分が不便な目に遭ったからだけではない。
結果的には、たかがトゲが刺さって腫れたぐらいで病院へ行って、お医者さんのお世話になった自分がいけなかったのだ。わずか3分の診察とはいえ、自分のせいでもっと重症な患者さんの診察時間を奪ってしまったわけである。
日本は先進国の中でも医師不足が深刻なうえに、医療に対する信頼が非常に篤い国である。そのため、絶対的な存在としてのお医者さんに診てもらうために病院が大変混雑してしまう。
その結果として1時間以上待って3分診療が定着してしまった。