だいぶ前に、ある大学の日本人教授が筆者に「今の日本人の学生に経済成長とは何かを説明するのは本当に難しい」と語った。おそらく、20年もデフレが続いたために、日本の若者は経済成長を実感することができなくなったのだろう。
一方、中国では急激な経済成長が30年も続いた結果、一人っ子の若者たちは貧困がどういうものかを知らない。
40年前の中国はまだ毛沢東時代の末期にあり、経済が破たん状態にあった。食糧をはじめとするほぼすべての消費財は不足しており、配給制が実施されていた。40年前の中国人が夢見ていたことはただ1つ、腹いっぱい食べられるようになることだった。
1976年、毛沢東の死去とともに、毛沢東夫人の江青女史をはじめとする「四人組」が逮捕され、鄧小平が復権した。最高実力者となった鄧小平は「改革・開放」政策を推し進め、国民に「小康生活」(そこそこの生活レベル)の実現を約束した。
「小康生活」は決して“リッチ”な生活とはいえないが、それでも毛沢東時代に比べると豊かな生活の実現を期待することができた。腹いっぱい食べられるようになることを夢見て、人々は懸命に働くようになった。