北京の天安門広場と人民大会堂(写真:Google

 3000人の日本の観光業界関係者が日本の政治家のセッティングによって大挙して中国を訪問し、北京の人民大会堂で習近平国家主席の演説に耳を傾けた。

 このような日中間の大規模な交流活動は初めての試みではない。約30年前の1984年にも3000人の日本の若者が中国を訪問し、行程の最後に北京で大交歓会が行われた。

 こうした公的な訪中団は、パトカーに先導されるバスに乗って移動する。バスが通るとすべての交通信号が青になる。人民大会堂では、日本ではありえないほど大掛かりな宴会が用意され、参加者はお決まりの中華料理を堪能する。そして、「さすが5000年の歴史を有する中国はスケールが違う」と感嘆するのである。

 主催者は、大規模な交流会が日中友好を推進するのだと主張する。しかし、筆者は常々「これで日中友好と言えるのか」と疑問に思っている。

 個人的な経験から言えば、その国のことを本当に理解したければ、パトカーに先導される専用車ではなく、現地の人と同じようにバスや地下鉄を利用するべきである。そもそもそちらのほうがよほど楽しい。食事も人民大会堂のようなところではなく、町の食堂や居酒屋のようなところで食べたほうがよい。

 かつて、筆者の知り合いの中国の副大臣が日本にやって来たとき、午前中だけ自由時間ができたのでどこかに連れていってほしいと頼まれた。筆者には日本のパトカーを動員する力などまったくないので、一緒に地下鉄に乗り新宿に連れていってあげた。ぶらぶら散策しただけだったが、副大臣は別れ際に「楽しかった。公式訪問はもううんざりだ」と漏らした。おそらく本音なのだろう。