四川省という地名を聞いて、一般的な日本人がイメージするのは、麻婆豆腐に代表される四川料理とパンダではないだろうか。歴史好きの人であれば、四川省の省都である成都市が三国志の劉備玄徳と諸葛孔明ゆかりの地であることも知っているかもしれない。
四川省には産業のイメージは薄く、歴史や文化、そして豊かな自然に恵まれた土地であるというイメージが強い。
事実、四川省は古来豊かな水、広大な農耕地、および温暖で安定した気候に恵まれ、農業が発展した豊かな地域だった。四川料理が安くておいしい理由もそこにある。
その自然環境のおかげであくせく働かなくても生活が安定しているため、成都に代表される四川省の人々は心に余裕があり、全体としてのんびりした雰囲気であると言われることが多い。
このゆったりした環境や気質は日本人にも親しみやすいため、日本人ビジネスマンは同じ西部地域の中でも重慶より成都の方を好む傾向がある。
四川省の省都=成都は西部地域の中核産業都市
そんなのどかなイメージを抱きながら成都を訪問すれば、目覚ましい経済発展を謳歌する巨大な産業都市であることに驚くはずだ。中心部の市街地には北京や天津といった中国を代表する主要都市と比べても見劣りしない高層オフィスビル群や高級ショッピングセンターが立ち並ぶ。
成都市およびその近隣都市の周辺には広大な経済開発区が広がっており、トヨタ自動車、フォルクスワーゲン、プジョー・シトロエン、現代自動車などの自動車メーカーに加え、インテル、テキサス・インスツルメンツ、ユニリーバといった世界トップクラスの企業が続々と進出している。
成都市の戸籍人口は1187万人。これに対して、戸籍はないが、成都市に住む流動人口を含めた常住人口は1435万人と、外部から流入する人口がかなりの比率に達している。
通常、地方都市では沿海部などの主要都市に出稼ぎに行く人が多いため、常住人口は戸籍人口より少ない。しかし、成都は逆だ。成都に集積する様々な産業が外部からの労働力を吸収しているためである。
成都は重慶、西安と共に中国の西部地域(四川省、重慶市、陝西省、雲南省など12省市自治区を含む)をリードする中核産業都市である。とくに成都と重慶は距離的にも近く、四川省(8100万人)と重慶市(3000万人)の人口を合計すれば、約1億1000万人と日本の人口にほぼ匹敵する人口集積地域である。