80年代に入ると中国人の夢はもう少し膨らみ、「日本製の家電(カラーテレビ、冷蔵庫、洗濯機)を持つこと」になった。90年代初期、都市部の住民のほとんどはその夢を実現した。そして、2000年頃には農民の半分ほどがこの夢を実現した。

 ちなみに、今でも中国には依然として2億人ぐらいの貧困層がいる。習近平政権が掲げる新たな政策目標は、2020年に全面的に小康社会を実現することだ。それは、中国社会から貧困を撲滅することを意味する。

自由を求める富裕層が頭痛の種に

 20年も景気停滞を喫した日本人は、もういちど経済成長を味わいたいはずである。アベノミクスは日本人のそうしたニーズに応えるために、GDP600兆円の達成、希望出生率1.8の実現という成長戦略を打ち出している。

 冷静に考えれば、いずれも簡単には実現できない目標である。もちろん実現しなくても問題にはならない。なぜならば、そのときは安倍政権がすでに交替したあとだからだ。

 一方、習近平政権は目標とする「全面的な小康社会」を2020年までに実現しなければならない。習近平政権は2022年まで続く予定なので、任期内に政策目標を実現する必要がある。

 しかし、習近平政権は厳しい現実に直面することになるだろう。

 貧困層はもちろん豊かな生活を送りたいと考えている。富裕層も裕福な生活を送りたいと考えている。だが、富裕層はそれだけでは満足しない。裕福であると同時に「自由」な生活が欲しいのだ。自由を求める富裕層は、共産党の一党支配の政治体制と対立してしまう。

 習近平政権の執政方針は、社会を厳しく管理しながら経済成長を目指すことである。つまり、共産党政権を持続しながら経済成長を図ることである。共産党の利益と人民の利益とが対立した場合、躊躇なく共産党の利益を優先することになる。