ノーベル物理学賞、梶田隆章氏ら2氏に 「ニュートリノ振動」発見

ノーベル物理学賞の受賞が発表されたことを受けて東京大学で記者会見し、笑顔を見せる梶田隆章氏(2015年10月6日撮影)〔AFPBB News

 いつ来ても不思議でない、全く当然のものが、たまたま今年来たわけね・・・。

 物理にわずかでもタッチしたことがある人なら、誰もがスーパーカミオカンデのニュートリノ振動のノーベル賞受賞をそのように思います。

 それくらい当たり前のこと、人類が科学を手にし、宇宙を認識するようになってこの方得られた成果の中でも、飛び抜けて重要な結果が、万が一にもノーベル物理学賞を受けないなどということがあれば、その方がよほど問題でしょう。でも、そういうことは実際に起きてしまうことがある。

 例えば今回の業績は、何千人という物理学徒の献身的な労苦によって達成されたものですが、もしその代表を選ぶなら、第一に名が挙がらねばならない人はノーベル賞を受けることができませんでした。

 戸塚洋二さん、この人こそ、ニュートリノ振動の観測で本当に汗を流し、足を棒にして働いた中心人物であり、同じ労苦を膨大な数の物理屋、技術者、協力者が惜しみなく提供して、宇宙の構造にとって最も本質的な成果の1つは得られました。

アジア人が過半数を占める時代

 本来なら3人の定員があるノーベル物理学賞、今回は2人の受賞者で1つ空席があります。この空席こそ、戸塚さんのために空けられた名誉の「永久欠番」であろうと思います。

 実際、2007年のフランクリン・メダルはこの業績に対して今回の共同受賞者マクドナルド博士と戸塚さんに授与されています。関係者がこうした事実は一番強く感じておられることでしょう。

 また今年のノーベル自然科学3賞は、全8人の受賞者のうち4人をアジア人が占めるという、前代未聞の状況になりました。

 空席の戸塚さんを入れれば9人中、5人つまり過半数が非西欧人、5人中3人が日本人というバランスは、現在の人類が地球上で展開している基 礎科学の中で、日本が占める割合と責任、世界の期待とを正確に反映していると思います。

 日本2(プラス1空席)、トルコ、そして中華人民共和国籍で無学位の女性パイオニア研究者にノーベル賞の栄誉、今年のノーベル賞は大変良い仕事をしていると思います。こうした内容は次回、もっと踏み込んでお話することにいたしましょう。

 さて、メディアは梶田さんのノーベル物理学賞と書くと思いますが、梶田隆章さんご自身は、既にこの世にいない多くの協力者たち、とりわけ折戸周治、戸塚洋二、須田英博という3人の栄誉を最大級に称えて、科学のフロンティアに立つ人として、謙虚の極限のように発言され、振舞われるに違いない。

 私は勝手にそう確信しているし、またそれこそ、ノーベル賞が神岡から梶田さん1人を選んで、カナダ・グループのアーサー・マクドナルドとともに物理学賞を授与しつつ、今後に期待する大きなポイントであると思うのです。