特に若い梶田さんの責任は重大、同じ分野のノーベル賞選考委員、ジェローム・フリードマンも強調していましたが、低エネルギー時代の高エネルギー物理学をリードするには、超高度の英知と、何より体力と情熱が必要不可欠です。

 スーパーカミオカンデを筆頭に「日本の素粒子実験」は、欧州のそれと並んで冷戦中冷戦後を問わず常に回転し続けた、偉大な2つの車輪です。それをまもり育てていくのは、日本が世界の科学に対して追う責任という面もある。

 現在、日本全国~世界に広がる小柴研系列のラボラトリーは駒宮幸男研究室小林富雄研究室、また梶田さんの宇宙線研究所、本郷ではかつて放射線実験のリポートでお世話になった同級生、浅井祥仁君の研究室など、いずれも「いつノーベル賞をもらってもおかしくない」サイエンスの王道で王手詰めを続ける研究が日夜続けられています。

 ちなみに小林富雄先生と浅井君は2013年の仁科記念賞を「ヒッグス粒子の発見」で受けています。同年のノーベル物理学賞がこの仕事の理論家であるピーター・ヒッグスとフランソワ・アングレールに授与されており、小林富雄先生と浅井君もこの仕事でノーベル物理学賞を得て全く不思議でありません。

 そういう水準で、幾多の日本の優秀な科学者が、昼夜を分かたず努力している等身大の現実を、とりわけ若い世代の人々に肌で感じてもらいたい、そんな機会に、ノーベル賞の受賞がなれば、何よりと思います。

 おかしな剽窃とか、捏造とか、紙の上だけ丸がつく無意味な答案とかではない、揺らぐことのない「ファクト」の独自業績、「オリジナル」を当たり前のように毎日倦むことなく生み続けていくこと・・・。

 梶田教授のノーベル物理学賞受賞をお喜び申し上げるとともに、単に1つの研究室、あるいは1グループ、1大学にとどまるのでなく、日本全体の成果として、世界に果たすべきパイオニア、牽引者としての役割と責任も、広く社会とともに大切に考え、守り育てていくべきだと思うのです。