油価下落とロシア国家予算案
油価下落はCIS諸国の原油生産・輸出国、特にロシア、アゼルバイジャン、カザフスタンなどに大きな経済的悪影響を及ぼしています。油価下落により油価連動型のガス価格も下がりますので、天然ガス生産・輸出大国のトルクメニスタン経済にも影響大です。
ロシア経済発展省は2015年9月11日開催の閣議において、今後3年間のロシア経済予測と2018年までの油価・ガス価格予測を発表しました。
2014年の平均輸出油価は1バレル98ドル、天然ガス価格は1000m3当たり351ドル(実績)。2015年見通しは油価50ドル、天然ガス237ドル。2016年予測は油価50ドル、天然ガス162ドル。2017年は55ドルと184ドル、2018年は60ドルと194ドルの予測です。
輸出量予測は、原油は2015年見通し237百万トン、2016年予測228.5百万トン、2017年223.5百万トン、2018年234.5百万トン。天然ガス輸出量は2015年見通し170.2bcm、2016年予測174.7bcm、2017年178.4bcm、2018年184bcm(bcm=10億m3)。このうち、対ウクライナ向け輸出量は、2015年予測10bcm、2016年10bcm、2017年12bcm、2018年14bcmの想定です。
LNG輸出量は2016年予測10百万トン、2017年11百万トン、2018年16百万トンです。
ロシアでは現在、来年度予算原案を策定作業中です。2015年8月4日付け露政令#789にて2016~2018年予算案策定が指示されましたが、その後油価が大きく変動しており油価見通しが困難となり、従来なら2016~2018年の3か年予算を策定するはずが、来年以降予算は例外措置として2016年のみの1年予算となりました。
また、本来なら10月1日までに政府原案を議会(ロシア下院)に提出しなければなりませんが、政府側は提出期限を10月25日まで延期することで、議会側の基本承認を得ました。
ロシア経済は“油上の楼閣”です(もちろんシンボリックな意味合いです)。輸出額の約7割が燃料・エネルギー関連(主に石油と天然ガス)、国庫歳入の約半分とGDP(国内総生産)の約1割が石油(原油・石油製品)と天然ガスからの税収ですから、油価下落(=ガス価格下落)は国庫と経済に大きな打撃を与えることになります。
プーチン首相は2000年5月に大統領に就任しましたが、当時の油価は1バレル10~20ドルの水準でした。ところが大統領就任後、油価は徐々に上昇開始。油価上昇の最大の恩恵を受けたのはまさにプーチン大統領その人と言えましょう。
しかし、逆も真なり。現在の油価下落によりロシア経済も低迷。プーチン大統領は大統領就任以来最大の試練に直面していると言っても過言ではないでしょう。