「幸せな家族は、お互い皆よく似ている。不幸な家族は、不幸の様相が皆異なる」
御存知、人口に膾炙する名句。レフ・トルストイ不朽の名作『アンナ・カレーニナ』冒頭の一節です。
時は1991年12月12日。所はトルクメニスタンの首都アシガバート。その日集まった5人の指導者達の顔は苦渋に満ち、草原の覇者・砂漠の征服者の子孫達の不幸の様相は皆異なっていた。
アジアの中央ではないのに中央アジア
安倍晋三首相は2015年10月22~28日、モンゴルと中央アジア5か国を歴訪しました。
22日のモンゴル訪問後、トルクメニスタン~タジキスタン~ウズベキスタン~キルギス~カザフスタンの順番で中央アジア5か国を歴訪し、数兆円に上る商談が基本合意に達したと報じられています。
中央アジアは天然資源の宝庫ですが、特に、トルクメニスタン・ウズベキスタン・カザフスタンは原油・天然ガス大国です。
皆様、お手元近くにある世界地図を開いてみて下さい。地図を手に取りその位置を確認すれば、中央アジアとは言いながら、ここが「アジアの中央」でないことは一目瞭然ですね。
では、この地域がなぜ中央アジアなのか、疑問が湧くのではないでしょうか?
漢民族にとり、世界の中心は漢(中華)。周囲は東夷・西戎・南蛮・北狄と呼ばれる異民族の住む世界。今で言う中央アジア地域は、「西域」と呼ばれていました。
中央アジアはロシア語では、地理的概念たる「スレドニア・アジア」(Средняя Азия)と呼ばれています。この言葉が英語では「セントラル・アジア」と訳され、これが日本語で「中央アジア」と訳されました。
しかし、ロシア語の「スレドニア」は「~の間の」「中間の」「平均の」という意味であり、英語の「セントラル(中央の)」という意味はありません。