久しぶりにJR中央本線の立川駅で降りた。日本で初めて駅ナカでクリニックを開業した久住英二先生に会うためである。日本の医療は様々な問題を抱えているが、最も身近な問題は、働く人が診療を受けにくいということではないだろうか。
帰宅後に受診したくても診療時間が終わっている、子供が夜急に熱を出しても診てくれるところがない、総合病院は何時間も待たされる・・・。
コンビニエンスストアは消費者の生活パターンに合わせることで急成長したわけだが、医療機関にはそのような顧客目線は乏しく、いつになっても診療を受ける側と診る側のミスマッチは解消してこなかった。
久住先生はこの問題に正面から取り組もうと立ち上がった医師である。2008年にJR立川駅の駅ビル、エキュート立川に「ナビタスクリニック」を開業した。ターミナル駅に直結してしかも夜9時まで診療しているので、会社から帰りがけに受診できる便利さが受けて人気の医療機関となった。
その後、2012年にはJR川崎駅、JR東中野駅にも開業。内科、小児科、皮膚科などを揃え、子供を持つ親にも便利な医療機関として注目を集めている。
患者目線で人気の駅ナカクリニック
そして重要なのは、受診する側のニーズを考えた取り組みを始めたことで、日本の医療における問題点がより明確になり、またその改善策が見えてきたことである。刑務所の医師も務めたことがある久住先生に日本の医療が抱える問題点と解決策を聞いた。
川嶋 医療の問題はなかなか改革が進まないのが実情です。しかし、変化がないかと言えば成果を上げている試みがいくつもあります。久住先生は、患者さんの利便性を最優先して駅ナカという新しい立地を選ばれました。
診療を受ける側にすればとても有難いことだと思います。できてしまえば簡単なことのように思われるかもしれませんが、そこに至る道のりは決して平たんではなかったと思います。
そこで、久住先生が駅ナカクリニックを始めることになった動機やその背景にある日本の医療の問題点をお聞きしたいと思います。また、実際に開業されるまで、開業されてからのご苦労話などもお聞かせください。
久住 ナビタスクリニックが駅ナカを選んだ目的は、まず都市部で忙しく働いていらっしゃる方々は気軽に医療機関を受診できない場合が多いという点が挙げられます。
それを解決するには、夜間にも診療が受けられ、かつ会社帰りなど普段の生活導線の中に医療機関があれば便利だろうという発想です。うちは平日は夜9時まで診療しているので、昼間に病院へ行く時間がないという方に診療の機会を提供できるようになったことは間違いないでしょう。