貨車をけん引する機関車(写真提供:JR貨物)

 そこで、国内でディーゼルおよび電気の機関車を約600両保有する数少ない鉄道事業者として、自社の貨物輸送のスキルを海外に展開することを検討し始めたのが、JR貨物である。

 同社はもともと日本国内で事業を展開しており、JR東日本などと組んで散発的にインドの貨物輸送鉄道の調査に参加する程度しか海外と接点がなかった。

 しかし、2011年11月に日本の鉄道システムを海外に展開するためのコンサルティング企業として日本コンサルタンツ(JIC)が誕生したことから、海外事業の興隆を見越した同社も14年1月、海外事業室を設立。コンテナのオペレーションシステムが専門だった西村公司氏が海外事業室の室長に就任した。

 西村室長は現在、ヤンゴン~マンダレー間の幹線鉄道の近代化に向けたJICAの詳細設計調査(D/D)に貨物担当の団員として参加している上、冒頭の実証実験にも参画した。

 初めてこの国の鉄道の現状を目の当たりにした西村室長は、想像を超える劣悪さに息をのんだ。

 「特に車両が“悲惨”の一言。連結器が完全でないものが多く、スピードを上げると列車が分離する可能性があるし、破損している空気管に布を巻き付けて空気漏れを防ごうとしているが、ほとんど意味がない状況でブレーキも利いていない」

 さらに、機関車や貨車の検査のバックグラウンドを持つ宮口牧人・室長代理も、現地で整備する道具も部品もなく、走行できなくなった車両から部品を取り出し使い回しているケースを見かけ、大変驚いたという。

 それでも西村室長たちは、この国に可能性を見出している。彼らの切り札は、日本の狭い国土や道路幅を踏まえて旧国鉄が独自に開発した12フィート(約3.6m)の小型コンテナだ。

 実証実験から約3カ月後の今年1月には、ヤンゴンで開かれた両国の政策対話の場で「長大な海上コンテナは大型クレーンを使わなければ積み下ろしができないが、12フィートコンテナなら小回りの利くフォークリフトで扱える。河川港に設置すれば水運の荷役作業も効率化できる」とアピール。

 すると、ミャンマー運送事業者協会(MIFFA)のアン・クン・ミン会長が「トラック輸送だけでは限界に来ている今日、鉄道や内陸水運をもっと活用していくべき」だと指摘した上で、12フィートコンテナに強い関心を示してくれたという。

 もちろん、従来の海上コンテナに比べかなり小ぶりの12フィートコンテナを新たにこの国に導入するためには、コンテナを固定するためのツイストロックを新たに貨車に設置するなど、さまざまな改修も必要になる。