一国物流からの脱却も

ヤンゴン港でコンテナの積み込みを見守る人々(写真提供:山九)

 南北2200km、東西925kmの広大な国土を持つミャンマー。この国では現在、貨物の運搬はトラック輸送が主流だ。

 実際、海外からコンテナで輸入されてきた貨物も、現在は、ヤンゴン港で荷揚げされるとそのままコンテナから出され、遠方に運ぶ荷物は大型トラックに積み替えた上でマンダレーのトラックターミナルまで運搬し、そこでさらに荷をばらして配送されている。

 総延長約5844kmを誇る鉄道も、ヤンゴン港で陸揚げされた洗剤や食用油などをマンダレーまで運んだり、逆に、北部で採れた豆や麦などの穀物類、材木など、いわゆる「安い」「重い」「かさばる」貨物以外の運搬にはほとんど用いられていなかった。

 しかし、荷物が発生するたびに運搬するトラック輸送は、あまり効率的とは言えない上、近年は、規定重量以上の積み荷を運ぶ過積載の車両の増加による道路の損傷やガソリン代の変動に伴う輸送費の高騰、都市部の渋滞の深刻化、といった問題も指摘されるようになっていた。

 また、鉄道で輸送する場合も、旅客車両に有蓋車と呼ばれる貨車を連結し、荷役夫を動員して手作業で積み降ろしを行っているため、労働集約型の荷役作業による金額的・時間的なロスや荷痛みが深刻化していた。

実証実験の様子は現地の新聞でも大きく報じられた(写真提供:山九)

 いっそ、ヤンゴンから海上コンテナをそのまま鉄道でマンダレーまで運び、そこから必要なところにトラックでデリバリーすれば、貨物を積み替える経済的なロスや作業の手間も省くことができる。

 その上、マンダレーにデポを置き、通関手続きを行えるようにすることで、マンダレー州政府の収入増にもつながるのではないか――。今回の実証実験には、そんな期待が込められていた。

 さらに、国際物流の観点から見ても大きな意味があった。国交省からこの調査を受託した山九は、インドシナ半島の東西回廊を対象にした陸路物流の実証試験をはじめ、長年にわたりグローバルな物流サービスの開拓・提供を行ってきた。