ヤンゴン駅に入線した日本の中古車両

 さらに、東氏は「日本政府が力を入れているティラワ港の開発計画が進んで工場の建設が始まれば、通勤客も増え、ティラワと市内をつなぐ鉄道整備のニーズも出てくるだろう」と指摘。

 その上で、「例えば同国の観光地パガン周辺でSL観光列車を走らせたり、一部民営化する構想も生まれている」と話す。

 このほか、日本財団や運輸政策研究機構も調査や維持管理機材の供与などを通じ、この国の鉄道の近代化を支援している。

 こうしてさまざまな鉄道事業の構想が動き出す中、目玉事業の一つと言えるのが、ヤンゴン~マンダレー間の幹線鉄道の近代化に向けた借款の供与だ。

 2014年夏まで続いていた全国運輸交通マスタープランでも、2020年までは基幹インフラに注力すべきことが提言されたのを受け、同年8月、詳細設計調査(DD)が始まった。

 1年半におよぶマスタープラン調査では、現状の交通量や各交通モードの利用状況を調べた上で、20年後、30年後の将来的な需要を予測し、優先的に進めるべきプロジェクトのリストアップを行ったが、DDで目指すのは、着工に向けた実際の図面作成だ。

鉄道の保線は安全性の向上に不可欠な作業だ

 地質や信号、電機など、分野ごとに専門家が数人ずつ配置され、より詳細な調査が行われる。オリエンタルコンサルタンツグローバルをはじめ、JICやパシフィックコンサルタンツなど、5社の共同事業体(JV)として結成され、総勢約60人の専門家が参加している。

 さまざまな形で奮闘する日本の技術者たちによって、難題山積のこの国の鉄道がどのように変わり、人々の暮らしが変わっていくのか。計画段階から具体段階へと進んだヤンゴン~マンダレー間の幹線鉄道の改修を筆頭に、この国における鉄道の「復権」計画が始まった。

(つづく)

本記事は『国際開発ジャーナル』(国際開発ジャーナル社発行)のコンテンツを転載したものです。