日本に学ぶ維持管理

電気・軌道総合検測車に初めて乗ったミャンマー鉄道の職員たち

 昨年10月末、東京駅4番線ホームはいくぶん閑散としていた。13時04分発の京葉線下り列車が発車した数分後、白地に赤いラインの電車が静かに滑り込んできて停車した。電光掲示板の表示は「試運転」。

 ベンチに座って談笑したり、携帯電話をいじりながら隣の3番線で次の発車を待っている人々は特段気付いている様子がないが、この列車、よく見ると窓が極端に小さい。

 開いたドアからは、座席の代わりに箱型の機械が並んでいるのも見え、明らかに通常の旅客用列車ではないことが分かる。

 そう、これは、線路のゆがみや振動を計測し、異常がないか点検するために使われる「電気・軌道総合検測車」。普段はなかなか目にする機会のない、鉄道ファンにはたまらないレア車両だ。

 しばらくすると、中から蛍光色の安全帯を身に着けた人々が8人出てきて、ホームに降り立った。事故や脱線のない安全で正確な鉄道輸送サービスの実現を目指し、2013年8月より行われている技術協力のカウンターパートたちだ。

 プロジェクトの一環で実施される日本での研修に参加するために来日した彼らは、普段はミャンマー国鉄(MR)の組織運営に携わっている。

 研修員の中のリーダー役であるウィンナイン氏は、「ミャンマーでは、線路のゆがみは目視で調べるしかないため、時間も費用もかかる。今回、初めて検測車に乗ったが、短時間で正確に記録でき、素晴らしい」と興奮気味だ。

鉄道の安全性を強調するウィンナイン氏

 「ミャンマーの鉄道は、本来必要な維持管理作業のうち6割程度しか実践できていない」と冷静に分析した上で、「鉄道事業で最も重要なのは安全性。それを実現する維持管理について学びたい」と話してくれた。

 2週間の滞在中、一行は秋田県男鹿半島を訪れ、ミャンマーと同じ非電化路線である男鹿線のディーゼル車両にも乗り日本の仕組みを見て回った。