(3)好戦的な文民が戦争をもたらすという考え方

 第3は、話題作『シビリアンの戦争――デモクラシーが攻撃的になるとき』で著名な青山学院大学兼任講師の三浦瑠麗先生やジョン・キミナウの研究です。これは、対外行動を巡る政策決定過程では、軍人よりも文民の方が攻撃的な政策を主張する傾向が時としてあるというものです。

 三浦先生の言葉にあるように「軍の暴走の懸念は日本では強いが各国でもまだ強い。しかし現実はむしろ文民政府の暴走とそれへの国民の支持こそが問題」という、大変興味深い、逆説的な主張です。つまり、軍よりも文民の暴走こそ防止すべきだというものです。

(4)政治指導者は軍に対して遠慮なく介入するべきという考え方

 第4は、ジョンズ・ホプキンス大学教授のエリオット・コーエンによる主張です。これは戦時の文民指導者は、軍隊に対し、恐れずひるまず介入すべきという主張です。

 戦時の政軍関係においては、クラウゼヴィッツを理論的な根拠として、政治指導者は戦争のあらゆる局面で介入すべきと主張します。彼は、リンカーン、ベングリオン、クレマンソー、チャーチル等のような偉大な政治指導者は、軍部と衝突し、遠慮ない批判や対話を重ね、人事異動を積極的に行うことで、政治目的を戦争によって達成できたと評価します。

 一方、クリントン政権までの米国の政軍関係は、政治指導者がハンチントン的な「通常(normal)」の理論に基づき、軍と距離を置き、積極的な介入や対話をしないことで、ベトナム戦争の敗北、湾岸戦争の戦略的な失敗等につながったとしているのです。