「企業または産業の活力を何で測るか?」 

 以前、ある雑誌の編集者から、このような質問を受けた。私は、「研究開発力と収益力が高い場合、“活力”が高い」と回答した。もう少し詳しく言うと、研究開発が活発に行われ、次々と新技術や新製品が生み出され、それが売り上げにつながり、高い収益を上げ、その収益から次への研究開発投資がなされる。こうした正のスパイラルを生んでいる状態が、活力の高い状態であると考えている。

 収益力については、売上高営業利益率の推移を調べれば明らかにすることができる。しかし、研究開発力を定量的に測定することは容易ではない。

 すぐに思いつくのは学会発表数、論文数、特許出願数などであるが、特許はともかく学会発表や論文については、多数の学会や学術雑誌が存在しているため、その分析はなかなか難しく、着手できていなかった。

「VLSIシンポジウム」が採択した論文数をカウント

 そのような中、「VLSIシンポジウム」という半導体の国際学会の全予稿集を入手した。VLSIシンポジウム(注1)は、半導体のオリンピックと呼ばれるISSCC(注2)、半導体デバイスの国際学会IEDM(注3)とともに、半導体の3大重要学会の1つに数えられている。どれも論文採択率が30~40%で狭き門であり、そのため非常に高いクオリティが維持されている。よって、VLSIシンポジウムの論文採択数は、研究開発力の指標の1つに使えるかもしれない。

 このVLSIシンポジウムは毎年6月に京都とハワイで交互に開催され、デバイス・プロセス技術に関するテクノロジー(Technology)分野と、システム・回路設計技術に関するサーキット(Circuit)分野の2つに分かれている。それぞれの分野で毎年、50~100件程度の論文が採択され、学会発表が行われる。

 今回、1981~2014年のテクノロジー分野と、1987~2014年のサーキット分野の予稿集それぞれについて、国別の論文数をカウントし、そのシェアを算出した。そして、その論文シェアと、日本の半導体出荷高シェアとの間に相関関係があることを見出した。以下に、その詳細を報じる。

(注1)VLSIシンポジウム:Symposia is an international conference on semiconductor technology and circuits

(注2)ISSCC:International Solid-State Circuits Conference

(注3)IEDM:International Electron Devices Meeting