また、地元のお客様にポイントカードを発行し、年に1回、多くのポイントが貯まったお客様を社員と一緒の慰安旅行に招待し、顧客との距離を縮めるという企画も実施している。松岡社長は、顧客と家族ぐるみの付き合いを行っていると言っていた。
売上の拡大か管理の重視か
一般的に卸売業や小売業では、製造業と違い利益率は低いと言われている。そのうえ売れ残り商品の値引きロスや在庫中の破損や汚損、盗難ロスなどが発生するため、さらに利益率が低下する。その結果、売上拡大を目指し小売業では「売上がすべてを癒す」という格言があるほど、売上拡大に奔走する。利益率は低いが売上が多くなることでスケールメリットが生まれ、多くのキャッシュが手に入り、副次的にいろいろな利点が生じることになるからだ。
当然ながらまるまつも高効率経営を行っているため、地元の銀行から好条件で店舗誘致の話が舞い込んでくる。しかし驚くべきことに、その社長は断り続けているというのである。
なぜかというと、目の届く範囲でないと管理が難しいからだ、というのである。常識的に考えればその通りであるが、普通のスーパーなら管理よりも売上拡大の方に魅力を感じ、好条件の立地なら即座に出店を決断してしまうところである。しかしこの社長は、頑として首を縦に振らないのである。
なぜですか、と再度尋ねると、「店舗を増やして管理が疎かになったらどうするのだ、『蟻の一穴』という言葉があるように、1つでも悪いところが生じると、そこからじわじわと経営が悪くなる。売上拡大をすることが果たして良いことなのか。今でも十分に利益が出ており生活するのに困らない十分すぎる収入があるのだ。それなのにリスクを抱えて拡大を目指して何になる。現在で十分ではないか」と言う。