相変わらず商品を山積みする老舗の和菓子メーカー

 一方、三重県伊勢市に、有名な赤福餅を作る「赤福」という300年を超える老舗企業がある。2007年に製造年月日の偽造事件があり約3カ月間の営業禁止処分を受けたことがある。

 赤福は販売を拡大したいあまり、伊勢から名古屋にいたる近鉄沿線の主要駅の売店や名古屋市内の売店に赤福餅を山積みしていた。販売予測が難しいため、当然売れ残る。それらを伊勢の本社工場に回収する。そこで廃棄するのが本来の姿なのであるが、もったいないという心理からか製造年月日を改竄(かいざん)していた。

 先ほどのスーパー、まるまつのようにIT経営を行っていればロスが減るのであろうが、赤福の場合は「廃棄品保管室を新設しました。売れ残り品は新設した廃棄品保管室に一時保管した後、一括して外部委託先により、全て廃棄いたします」という改善(?)を行っており、駅の売店の山積みは改善されていない。それだけでなく、昨年は父と子のお家騒動まで勃発している。

 赤福餅は、お伊勢参りのお土産として定着し、全国の神社の関係者が総本山の伊勢にお参りしたら必ず買って帰ると言われるほどの縁起物であり、結構人気商品なので、私は山積みする商品ではないと思っている。むしろ少なめに在庫しておき、1日で確実に売り切れるだけの量しか作らないようにすれば、欲しい人は競って購入しなければならなくなる。製造年月日改竄事件の反省をするのであれば、売れ残りロスへの対応を考えるのではなく、その逆のチャンスロス(販売機会ロス)を考え、機会損失を甘受すべきではなかったのか。

枚挙にいとまがない拡大路線の失敗例

 私が伊勢を訪れたとき、赤福の本社の駐車場に大きな外車が3~4台並んでいた。お払い通りに面しているため伊勢神宮にお参りする人の目にいやでも入り込む。儲かっている会社なんだなあと思って見ていたら、製造年月日改竄事件が起こり、お家騒動が起こった。