蘇州にオープンしたサトーカメラの中国フランチャイズ1号店(写真提供:サトーカメラ)

 とかくドライで計算高いと言われる中国のビジネス。そして、国を挙げて国民に植え付けている反日感情。そこに日本の商売の心を伝え、浸透させることは果たして可能なのだろうか。

 中国は今や「世界の工場」から「世界の市場」へと変化を遂げた。政治的には中国と緊張状態が続く日本だが、かつての製造業の拠点設立ブームに続き、最近は販売網の拡充やサービス業の出店の動きが目覚ましい。

 その流れの中、栃木県でカメラ販売チェーンを展開するサトーカメラ(宇都宮市)が中国進出を果たした。サトーカメラは、大手家電量販店がしのぎを削る栃木県において、15年連続カメラ販売トップシェアを誇る北関東最強のカメラ店である。

 上海の西側に隣接する蘇州市は、1000万人の人口を擁する中国有数の大都市だ。10月10日、その蘇州市の市街地にサトーカメラの中国フランチャイズ1号店がオープンした。

 店の看板には「キヤノン」の大きな文字。サトーカメラのマークは入口の横に掲げられている。店舗運営を丸ごとサトーカメラが指導するのではなく、キヤノンの販売代理店にプリントサービスや店づくりのノウハウなどを伝授する「ミニFC」という形での展開となる。

 サトーカメラといえば、当サイトの記事「喧嘩上等のカメラ店が『ど素人』に教わった商売の極意」でも紹介したように、これでもかと言うほど懇切丁寧で親身になった接客が大きな特徴である。そうした接客術を、中国人が経営する販売店にどのように伝授するのか。

 しかし、佐藤勝人専務の口から出てきた言葉は意外なものだった。「接客マナーはどうでもいい」と言うのである。いわゆる日本の「おもてなし」を中国に広めるつもりは毛頭ないようだ。

 それよりも佐藤氏が中国に伝えたいと考えていたのは、妥協なき「品質」へのこだわりであり、さらには商売の本質的な心得とも言えるものだった。