カンボジアが初参加している「ABUデジスタ・ティーンズ」プロジェクト。アジア各国の若者がデジタル映像作品を創り、各国の代表が決定し、12月にタイNBT局で収録される国際大会まで残すところわずかとなった。

ドキュメンタリーに反映される「お国柄」

 このプロジェクトは、映像コンテストイベントという側面も持ちながら、アジア太平洋放送連合(ABU)が主催し、NHKが全体をとりまとめつつ、参加するアジア各国と国際共同制作をしていくテレビ番組でもある。当然、わが国営テレビ局も、この共同制作に参画しているわけである。

 今回の参加国は日本も含め7カ国。当然、言語も習慣も、テレビ局の規模も、その制作能力も異なる国々である。恐らくこれを取りまとめるNHKの制作スタッフはかなり苦労されていると想像する。

カンボジア代表チームのコマ撮りの様子(写真提供:筆者、以下同)

 たとえば、参加学生が創る映像作品ばかりではなく、その映像を作り上げるまでの「ショート・ドキュメンタリー」を、各局は制作しなければならない。

 つまり、学生たちが制作していく過程でどんな壁にぶつかり、それをどう乗り越えたか、制作にどんな工夫がされているか、といったことを3分間のドキュメンタリーにしなければならないのである。

 日本人ならば、大体それがどういうものか想像はつくだろう。だから、自然と撮影するアイテムも決まってくる。

 ところが、これは過去の「デジスタ」で実際にあった話らしいのだが、たとえば、メンターと呼ばれる指導者が延々と作品について語る、というインタビューの映像が流れていた国があったのだそうだ。

 まあ、それはそれでお国柄というか、その国の人々が捉えている「ドキュメンタリー」と思えば面白いのかもしれない。が、つまりは映像イメージというものを言語化して異文化で共有するというのは、ことほど左様に難しい、ということなのである。

日本的ドキュメンタリーの作法

 さて、今回はカンボジアが初参加とのことで、NHKは特別にカンボジア代表チームの制作過程を取材するために、リポーターである土屋礼央さんを伴い、取材にやってきた。

 以前にも書いたが(「リポーターを多用する日本のテレビはガラパゴス?」)、リポーターという「視聴者の代理人」を媒介としてカンボジア代表チームを取材するという、いわゆる日本的なドキュメンタリーである。