農業特区として新潟市は「大規模生産拠点」として指定されましたが、今回は「中山間地農業改革拠点」として指定された養父市について述べます。
兵庫県養父市は兵庫県北部、豊岡市の南西部に位置する中山間地で、関西の住民には冬のスキー場が有名です。近年の話題になっている試みとしては、コウノトリが住める環境を作るために無農薬のコメ栽培を行っている地域の1つとしても知られ、栽培部会の本部も同市に置かれています。
2004年3月の養父市発足時点での人口は約3万人でしたが、ほぼ10年後の2014年2月末の人口は、2万6000人を切っています。かなり急速に過疎が進行している地域と言っていいでしょう。
個人ベースでの農家での農地の維持が困難になり、集団でなんとかしようと営農組合を作って回している集落もいくつかあります。しかしそんな営農組合でも、田植え機やコンバインに乗っているのはふだん豊岡や神戸に住んでいる息子たちで、彼らがいないとどうにもならないことも、ままあると聞いています。
そんな地域で今回特区に指定されたのは、広瀬栄市長の主導で、農地を扱う権限を農業委員会から市に移管するのと、愛知県田原市が本拠の農業法人新撰組の岡本重明氏を招聘して6次産業化を推進するのが、政府のお眼鏡にかなったからのようです。
岡本氏は、反農協の急先鋒の1人で、改革派の旗手としても知られています。その岡本氏がやろうとする6時産業化は、「ふるさと弁当」と名付ける地元産品を使ったお弁当を地元で作り、冷凍して輸出したり、農家レストランを作ったりといったことを考えておられるようです(参考「農業特区・養父市と組んだ『改革派農家』岡本重明が語る『日本農業再生の秘策』」、現代ビジネス」)。
農協の「使い方」を知っていた元農協職員たち
中山間地農業の活路を開く方向性として6次産業化は間違っているとは思いませんし、成功を祈りたいところですが、不安要素がないこともありません。不安要素とは、岡本氏の“反農協”姿勢がマイナスに働く可能性があることです。