韓国の旅客船沈没、死者6人 不明290人に

沈没したセウォル号(写真)の運航会社に捜査の手が迫っている〔AFPBB News〕

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 フェリー運航会社は清海鎮(チョンヘジン)海運だ。同社が韓国の金融監督院に提出した「監査報告書」を見てみた。1999年設立で、2013年の売上高は320億ウォン(1円=10ウォン)、営業損失が7億8599万ウォンとなっている。

 売り上げ規模が30億円強の中堅旅客船輸送会社だ。 

 では、誰が保有する会社なのか。筆頭株主は、天海地(チョンヘジ)という船舶関連会社で39.4%を出資している。次いで代表理事が11.6%、アイワンアイホールディングスが7.1%をそれぞれ出資している。

 これだけではさっぱり分からない。では、この天海地の「監査報告書」を見ると、この会社は船舶ブロックや造船プラントの製造を手がけており、売上高は1058億ウォン、営業利益は54億ウォンで、清海鎮海運よりもずっと大きい。

 この天海地の株主構成を見ると、先ほどのアイワンアイホールディングスが42.81%だ。

 韓国メディアによると、アイワンアイホールディングスが持ち株会社になって、清海鎮海運や天海地など数多くの傘下企業を抱えているという。このアイワンアイホールディングスは2人の大株主がいるが、この2人の父親が「実質的なオーナー」だという。

 では、この「実質的なオーナー」とは何者か。

京都生まれの「実質的オーナー」、背任罪や裏金疑惑で捜査へ

 京都生まれで73歳になったこの人物は、謎に包まれた経歴だ。

 いろいろな事業にかかわった後、1979年にセモという海運会社を設立した。ソウルを東西に流れる漢江の遊覧船事業で一時は成功した。韓国のランドマークである漢江の遊覧船の就航権を獲得したということは、それだけ当時有力なコネを持っていたということだ。

 だが、1990年に遊覧船が衝突事故を起こし、14人が死亡する惨事が起きた。会社の経営も振るわなくなり、1997年には事実上この会社が倒産している。

 ところが、その後経営者として再起し、海運、船舶、食品関連などの企業を抱える「小財閥」の総帥になっていたようだ。おまけに、セモまで買い戻している。

 一体どうやって再起を果たしたのか。資金源はどこだったのか。今はどのくらい資産があるのか。この人物の責任をどこまで問えるのか。捜査当局は、この点に関心を持っている。

 「実質的なオーナー」だから、登記役員などにはなっていない。2人の子供が保有する会社に株式を持たせ、本人は「芸術、文化活動」をしている。

 捜査当局は、まず、この芸術活動に目をつけた。その1つが、写真だ。趣味で写真を撮影しているだけなら問題はないが、自分が撮影した写真を使ったカレンダーや写真そのものを高額で、2人の子供が保有する持ち株会社の傘下企業に購入させていることが明らかになっている。写真1枚が5000万ウォンだとの報道も出てきた。

 韓国メディアは、これを「背任罪」にあたるとして捜査し、近くこの人物を召喚すると報じている。これを契機に、グループ会社の経営状況や実質的な支配構造にメスを入れるという。