また、ドイツで、カトリック教会が物議を醸している。幼児虐待スキャンダルが下火になったかと思ったら、今度は金権スキャンダルだ。
ヘッセン州のリンブルクという司教区で、司教の居館が建設されているのだが、それが贅沢三昧のものになるらしく、費用が当初の予算550万ユーロ(7億3700万円)から、少なくとも3100万ユーロ(41億5000万円)に膨れ上がっていることが判明した。
司教の特別注文が破格であるらしい。ひょっとすると、4000万ユーロ(53億6000万円)までいく可能性もあるといい、住民がものすごく怒っている。
金権司教に愛想をつかした教会からの脱会者が相次ぐ
とはいえ、カトリック教会というのは、あらゆる醜聞を内包しながら、それらをすべて覆い隠すという特技(権利?)を有しており、金権司教を罰するような法律はない。
カトリック教会内部は民主主義ではないので、信者たちには団結して司教を辞任に追い込む力もない。だから、怒りは今のところ大気中に充満している。司教が辞めるとすれば、自分の意思か、あるいは、ローマ教皇の鶴の一声で、となる。
この金権司教の名は、フランツ=ペーター・テーバーツ=ファン・エルスト(Franz-Peter Tebartz-van Elst)、53歳。
去年の夏には、インドの貧しい人たちに会いに行くのにファーストクラスを使ったとして非難を浴びた。そのあと、シュピーゲル誌のインタビューに対して、「自分はビジネスクラスを使った」と嘘までついた。
そして、その嘘がばれると今度はシャーシャーと、「インドの人々は何年ものあいだ私を待っていたのだ。長いフライトで疲れ切って、私が向こうで居眠りなどしようものなら、彼らをどんなにかガッカリさせたことか」と、変な言い訳をした。
ファーストクラスだけがシートをベッドにできるので、飛行時間中に睡眠するためには、ビジネスクラスではだめだったのだそうだ。
しかし、シュピーゲル誌についた嘘の方は、ちゃんとビデオで隠し撮りされており、命取りになるかもしれない。偽証罪で検察が動き始めている。聖職者の偽証というのは、しょっちゅうありそうだが、起訴されるとすれば、これが初めてのようだ。
そのうえ、建設中の豪華版居館の方も、司教がこの破滅的な予算オーバーを知っていながら隠していたという疑いで、背任罪の適用が検討されているという。いずれにしても、この放漫経営には信者が愛想をつかし、現在、教会の脱会者数はうなぎ上り、カリタスが一生懸命、寄付を募っても、市民は白けるばかりだ。
それどころか、寄付を集めていたボランティアの人たちが、バカバカしくなって辞めていっているという。カトリック教会のダメージは甚大だ。