「郊外」の空き家問題を改善するには

 では23区以外の、郊外においてはどうなのだろうか。

 池本氏は「郊外の空家問題は23区内とは異なる要因で発生している」という。「郊外の空き家増加は、高齢化が大きな原因です。郊外にいる人の多くは同時期に移り住んでいるため、平均年齢はどんどん上がっていますから。一方で、若者は都心との距離や利便性を優先するため郊外に住む人は増えない傾向があります。その結果として、空き家が増えていく。ここが23区内とは違います。ですから郊外の空き家問題と向き合うには、どうやって地域に若い人を取り込むかを考えなければなりません」

 それを踏まえた上で、池本氏が「解決策のモデルケース」として挙げる事例がある。1999年より、茨城県取手市の井野団地で行われている「取手アートプロジェクト」だ。

団地内の人たちが気軽に集えるカフェ(いこいーの+Tappino)

 井野団地では、65歳以上の割合が4割近くに達している。そこで取手市は、東京芸術大学と協力し、空き家やかつての商店をギャラリーなどに再利用した。地域にアート色を根付かせることで、若者の増加を狙ったのである。

 取手アートプロジェクトは今も継続されており、「アートのある団地」として、若者からの注目度も高い。このようなプロジェクトで若者を呼び込めば、多少なりとも空き家を減らせるかもしれない。池本氏はそう考えるのだ。

空き家以上に根深い、賃貸の「空室問題」

 現在、持ち家の空き家よりも厳しい状況にあるのが、賃貸アパート・マンションの「空室」だ。総務省の「住宅・土地統計」によると、2008年の賃貸用住宅における空室率は18.9%。およそ5部屋に1部屋は、空室と言える現状なのだ。

 「ここまで空室率が増えたのは、人口は減少しているのに新たな賃貸物件を建て続けていることが理由です。空室を抱える家主さんの悩みは、年々深刻になっています。ただ、そういった家主さんに参考にしてもらいたいのが『賃貸のカスタマイズ』。空室を減らすための手段として、ぜひ考えてもらいたいのです」(同)