「賃貸のカスタマイズ」とは、契約者が自由に部屋を改装できるということ。いわゆる「原状回復の義務(注:住み始めた時と同じ状態で部屋を返さなければならない)」を取り払った物件のことだ。

 「リクルート住まいカンパニーが実施した調査によると、賃貸物件に住む人のおよそ9割が『自分好みの部屋に変えたい』という願望を持っています。つまり、カスタマイズできることは物件の大きなウリになるんですね。であれば、その物件の人気を上げる(=空室を減らす)ための手段として、カスタマイズを許可することは有効ではないでしょうか」(同)

 最近では、UR都市機構の「カスタマイズUR」や、レオパレス21の「お部屋カスタマイズ」など、大手企業が扱うカスタマイズ可能物件も増えてきている。また、なかには改装費用の一部を家主が工面するところもあるという。

 もちろん、これらの動きが空室率の低下を根本的に止めるわけではないが、空室に悩む家主にとっては、今後、参考にすべき方法と言えるだろう。

空き家・空室問題を解決するため、いまできること

 空き家の再利用や空室の賃貸カスタマイズなど、問題に対する方策は様々に出てきている。しかし、このような手段はまだ認知度が低く、必ずしも一般的とは言えない。だからこそ、「一人ひとり異なるニーズをつなぐことができる情報の提供が必要」だと池本氏は語る。

 「例えば『こすみ図書』のような、空き家の再利用法に気付いている人はまだまだ少ないんです。空き家が持っている『賃料の安さ』や『自由度の高さ』といったメリットを、もっと知ってもらわなければなりません。また、空室対策の手段の一つとして『賃貸カスタマイズ』を知っている家主さんは決して多くありません。だからこそ、「SUUMO」を運営するリクルートが貸す側借りる側のニーズを拾い上げ、世の中に広めていく必要があると考えています」

 「SUUMO」では、空き家活用事例も紹介している「家を開く」コーナーや「賃貸カスタマイズ」コーナーを開設し、多くの事例を積極的に紹介している。

 人口減少、少子高齢化が今後も進むことを考えれば、空き家・空室の問題が深刻さを増すことは想像に難くない。新たなものを造るだけでなく、今あるものをどう生かすか。その方法を普及させることは、日本の住宅の未来のために必要不可欠なのかもしれない。