前回の「共助の関係構築に期待高まるコミュニティー型賃貸」に続き、多様な取り組みが広がるコミュニティー型賃貸住宅の事例を紹介したい。

コミュニティー型賃貸その3:多世代交流型賃貸住宅

 積水ハウス(本社大阪市北区)と積和不動産(東京都渋谷区)が「多世代交流型賃貸住宅」というコンセプトで開発した「マストライフ古河庭園」(東京都北区、2012年3月竣工)は、同じ敷地内に、サービス付き高齢者向け住宅*1(62戸、以下高齢者向け)と子育て支援型住宅(66戸、以下子育て支援型)を併設しており、管理会社が提供する交流イベントを通じて、それぞれの入居者同士、世代を超えた交流が行われている。

*1 高齢者の居住の安定を確保することを目的として、バリアフリー構造等を有し、介護・医療と連携し高齢者を支援するサービスを提供する住宅として都道府県に登録された住宅。一定の要件を満たし登録された住宅の建設に対する補助や税制優遇が受けられる。

写真1:多目的ホール。窓の外に屋外デッキがある。右手奥の扉を開けると食堂ラウンジにつながる。自動販売機は災害対応型(写真1~5は筆者撮影)

(1)交流のための共用空間

 高齢者向けと子育て支援型両者の共用空間として、多目的ルームと屋外デッキ、屋上庭園がある。主にこれらの空間を使ってイベントが提供されている。

 多目的ルームは高齢者向け入居者専用の食堂ラウンジと隣り合っており、扉を開ければ行き来ができるようになる。また、屋外に面した窓を開ければ屋外デッキに直接出られる。つまりイベント時にはこれら共用空間を一体的に活用することができるよう設計されている。

写真2:多目的ホールの一角にあるキッズルーム

(2)月1回のペースで交流イベントを実施

 オープンした2012年に開催された交流イベントを振り返ると、4月に屋外デッキを使ったマルシェ東北物産展、5月には屋上庭園でのサツマイモの苗植会、8月は納涼会、10月はハロウィンパーティー、11月にはサツマイモの収穫祭、12月にはクリスマスパーティーと、ほぼ月1回開催されている。

 イベント以外に、多目的ホールを使ってリース作りやサンドブラストなどのカルチャースクールを月1回開催している。これらは全て管理を行う積和不動産の企画・運営で行われており、イベントの参加は無料、カルチャースクールは材料費程度を徴収し、多いときで入居者の60%が参加するという。

写真3:屋上庭園

 こうしたイベントによる多世代交流の効果を物件管理の責任者である、積和不動産マンション賃貸営業本部アセット部シニア賃貸課の峯一(みね・はじめ)さんに聞くと、「8月の納涼会では、デッキで花火をしたが、これには子供たちだけでなく、高齢入居者にも喜んでもらえた。一戸建てに高齢者だけで暮らしていたときには経験できなかったと話していた」