都心部で広まり始めた空き家の再利用
そんな中、民間のレベルで「空き家問題に面白い動きが出てきている」と池本氏は言う。
「地方の空き家問題には過疎化が密接に関係しているため、民間レベルで対策を講じるのは非常に難しいのが実情です。ただ首都圏については、空き家の持つ魅力やニーズをうまく活かす試みが増えてきました。その一例が、墨田区の『こすみ図書』 です」
「こすみ図書」とは、墨田区向島にある民営の図書館。元は約15年間、空き家だった物件を、持ち主に交渉して借り、今の形に改装した。1階は、図書館とギャラリーを併せたパブリックスペースとなっており、2階の2部屋は、図書館のオーナーが自宅として使っている。記事冒頭で紹介した「家賃5万円台の一戸建て」とは、「こすみ図書」のことだ。
「23区内には、様々なライフスタイルを求める人がいます。例えば店舗を探していたり、サロンや趣味の空間を作りたかったり。そういう人にとって、空き家はお宝のような物件なんですね。家賃が通常相場より安く借りられることが多いですし、改装についても、家主は寛容なことが多いですから」(池本氏)
23区内で空き家を活用した例はほかにもある。同じ墨田区に居を構える「こぐまカフェ」 は、古くに薬屋として使われその後、小道具屋として改装された店舗を、ある夫婦が古民家カフェへと生まれ変わらせた。1927(昭和2)年に建てられた古民家の風合いをそのまま残し、1階を店舗に、2階を住まいにしている。
世田谷区にあるシェアハウス「Jam House」も、空き家だった物件の1つだ。元々、母子寮だった建物を一括借り上げし、2011年からシェアハウスに改装して使い始めた。その改装はシェアハウスの住民たちと一緒にほぼDIYでやったという。
ローコストで改装しやすいという空き家ならではの要素は、大きな魅力になる。3つの例は、そのことを教えてくれる。