以上で見てきたように、地方の魅力をアピールする一方、外国人ニーズを反映させた「体験型のオプショナルツアー」で満足度を充実させるなどの手法が考えられる。その答えがハードではなく、ソフトにあると分かれば、投資費用も少なくて済む。
「外国人を引きつける『日本の生活文化』は、国内のあらゆる所に眠っている」と横山さんは話す。そんな気づきをもたらしたエピソードを1つ、ご紹介しよう。横山さんが香港の観光客を函館の夜景に案内した際の話だ。
アジアのカップルの間では、旅行先で冠婚用の各種衣装を身に着けて写真を撮る「結婚前撮り」がブームになっているという。日本の観光地で「結婚前撮り」を行ってもらうオプショナルツアーが開発できるのではないか。横山さんはそのモニターツアーを実施した。
夜景をバックに撮影会を行うべく函館山に登ってみると、残念なことに一面の霧に覆われてしまった。香港の観光客は残念がっただろうか? 否、紅葉と街の明かりが見え隠れする幻想的な雰囲気が北海道の雪景色を彷彿させたのか、第一声は「ファンタスティック!」と、かえって大成功に終わったのである。
外国人観光客を誘致する場合、とかくパンフレットや交通標識、館内放送の多言語化などハード面での充実を図りがちだ。だが、こうした地域の日常的な生活や光景を旅行パッケージに組み込むことで伝えられる魅力はもっとあるのかもしれない。
「外国人観光客は日本の生活体験に対して高い関心を持っています。地域の埋もれた日常を商品化し、地域の魅力を伝える体験設計が今後ますます重要になってくるでしょう」と横山さんは話す。