もし、香港の観光客に日本の地方都市の夜景を見せたら、100万ドルの夜景を誇る彼らは何と言うだろう。自慢の景色も「おだやかな光ですね」で片付けられてしまうかもしれない。
観光地の理論ではなく、海外旅行者のニーズを探ったとき、初めて見えてくるものがある。旅行客視点に立った日本の観光資源を、改めて問い直してみたい。
経済成長で潤うアジアの旅行者を呼び込め
北海道屈指の温泉街で、手で触って泉質を当てる「利き湯」を体験しているのは、浴衣を身にまとった外国人観光客だ。専門家による温泉セミナーも開催され、「登別特有の硫黄泉には美容効果がある」と聞くと、特に女性のまなざしが熱くなる。夜には「温泉街グルメラリー」が予定され、初体験の「居酒屋」で飲む日本酒が、今から待ち遠しいという。
今、こうした身近な観光資源を活用した体験型のツアーが、訪日観光客の注目を集めている。人気の秘密はどこにあるのだろう。このツアーの生みの親でもあり、「タイ実証事業企画」などの研究でも知られるリクルートライフスタイルじゃらんリサーチセンター副センター長、横山幸代さんを訪ねてみた。
横山さんによれば、日本を訪れる外国人観光客の約7割は、アジアからの旅行客だという。特に韓国、中国、台湾の御三家が顕著だが、伸び率となると、タイやインドネシアなどのASEAN諸国も無視できなくなってきていると話す。
(データ元、JNTO 2011-2012年1~8月の比較)
こうした状況について横山さんは、「ASEAN諸国の経済成長には目覚ましいものがある。特に2010年以降、海外旅行を楽しむ余裕を持ったASEAN諸国からの中間所得者層の訪日旅行者が、目立って増えてきている」と分析する。