サムスン電子の株価が急落した6月7日は、李健熙(イ・ゴンヒ)サムスン電子会長にとって忙しい1日だった。
午前8時半には、5日に死去した義母の弔問のためソウル南部にあるサムスン病院を訪れた。故人の夫は、法相などを歴任したあとサムスングループ入りし、メディア事業の総責任者となった。
李健熙会長は、ここで経営者としての修業を積んだ。故人の長男は、韓国の大手紙、中央日報のオーナー会長でもある。
「新経営宣言」から丸20年、次は「事業の品格と価値」を追求
この日、李健熙会長には、もう1つ、大きな仕事があった。世界中の40万人以上の従業員に対してメッセージを送ったのだ。
李健熙会長がグループ全体の経営革新を唱えた「新経営宣言」から20周年を記念したもので、「これまで20年間、量から質への大転換を進めたが、これからは質を超えて事業の品格と価値をさらに高めなければならない」などと語った。
1993年の「新経営」を機に、サムスングループの売上高は29兆ウォンから380兆ウォン、税引き前利益は8000億ウォンから38兆ウォンへと飛躍的に拡大した。この「新経営」から20年目のメッセージを送ったまさにその日にサムスン電子の株価は証券会社のリポートをきっかけに急落してしまったのだ。
サムスン電子の株価は、好調な業績を背景にじりじりと上昇していた。5月30日には終値ベースで154万4000ウォンに達していた。証券市場では2013年1月2日につけた157万6000ウォンの高値更新は時間の問題と見られていた。アナリストの間でも、当面の目標株価を200万ウォン超とする見方が大勢だった。
2013年1~3月期に8兆7800億ウォンだった営業利益についても、スマホの販売が好調なことに加え半導体市況の回復などで4~6月期には10兆ウォンを超えるとの予測が相次いでいた。
そこへいきなりのJPモルガンのリポートだった。
市場関係者の間では「JPモルガンのリポートはギャラクシーS4の販売が鈍化していると指摘したが、部品メーカーなどの間ではそういう声は聞こえない」として引き続き強気の見通しを崩さない向きも多い。
だが、6月11日には、モルガン・スタンレーもスマホの販売目標を引き下げるリポートを発表した。