海外の知らない土地へ行ったとき、そこの情報を素早く的確につかむには、現地に何十年も暮らしている人に聞くのがいい。なかでもその地で通訳という仕事をされている人は最高である。仕事柄、最も新鮮でかつ日本人が一番知りたい情報に日々触れているからだ。

一流の通訳が持つ優れたコミュニケーション力

今週のランキング
順位 タイトル
1 百害あって一利なしの人間ドック、健診はおやめなさい
2 「どうでもいい存在」から抜け出し始めた日本
3 身構える中国と日本:開戦を告げる太鼓の音
4 改革しなければ革命が待ち受ける中国
5 再燃する通貨戦争:日本が火蓋を切ったゲーム
6 「アベノミクス」の物価上昇計画を脅かす賃金下落
7 ドイツ有力誌が伝えた麻生大臣の「さっさと死ね」発言
8 ロシアの超強力爆撃機がいよいよ中国の手に
9 中国を見下すようになった歴史と理由
10 好戦的発言を繰り返す下級将官は出世できない
11 沖縄(琉球)が独立する日-自主・自由のメリット
12 中国のグローバルパワーを脅かす政治的亀裂
13 カダフィ亡き後のアフリカの混沌
14 東南アジア諸国は日本の改憲に賛成している
15 怒れ、日本の消費者よ、現代自動車だけではない"燃費水増し"
16 ブラジル経済:悪化の一途
17 アップルの全盛期は終わったのか?
18 国が何かをしてくれるという気持ちが日本を滅ぼす
19 日本の自転車はいつまで歩道を走り続けるのか
20 人民解放軍暴走の不安が消えない理由

 イタリアのミラノには横田早苗さんという素晴らしい方がいる。いまから20年近く前に前の職場で、独りでイタリア特集を企画したときに知り合った。

 当時、1日に平均して5件もの取材を1週間以上も続けた。日本でも1日に5件の取材を続けるのは、やろうと思ってもなかなか実現しないと思う。

 まずこちらのスケジュールに合わせてうまく取材が入らない。そして海外では言葉の壁もある。いまではイタリアの中小企業経営者はほとんど英語を話すようだが、当時は若い人でも「英語はダメ」と断られた。

 横田さんの通訳は、まるで私の意思が乗り移ったかのようで、日本人が日本人に取材しているような感じだった。

 相手の言いたいことがとにかくすぐ頭に入ってくる。恐らく取材先のイタリア人も同じ気持ちだったに違いない。

 これぞ本物中の本物の通訳なのだと思った。

 そして、取材先についてもこちらのリクエスト以上の企業を紹介してもらった。日本企業とイタリア企業が提携というケースがあれば、多くの場合に横田さんが通訳されていた。

 そのため、繊維や家具、機械、自動車産業からビール、お菓子、おもちゃメーカーに至るまでイタリアの有力な中小企業とパイプを持っているのだ。

 当時の取材はトリノの北にあるアルプスのふもとの町から、アドリア海に面したリミニまで及んだ。横田さんの愛車アウディで移動したが、さすがに1日5件の取材と運転にはお疲れだったようで、途中からは私が運転を代わることになった。