安倍晋三首相の1月16日から18日までの東南アジア訪問は、意外な展開から意外な真実を見せつけることになった。
そもそも安倍新首相にとって東南アジア訪問が予想外の出来事だった。最初は本人も周囲も米国訪問を予定していたからだ。
自民党の政権復帰とともに、安倍首相は民主党政権がかき乱した日米同盟の絆を修復することを急務に近い外交目標としていた。第一の外国訪問はまず同盟相手の米国にするという構えだった。ところがオバマ政権の都合で1月中の訪米は無理だと判明した。そもそも大統領の就任式が1月21日なのだから、その直前はもちろん、直後も大統領の側の日程は密に過ぎたのだ。
そんな米国の事情から安倍首相の最初の訪問先は東南アジアとなった。しかもその訪問日程も、アルジェリアでのテロ勢力による日本人殺傷事件で短縮された。
だが安倍首相にとってこの東南アジア訪問は、自己の防衛政策や外交政策に意外な支援勢力が存在することを印象づけたのである。
中国の強硬姿勢に共に立ち向かう日本とインドネシア
米国のメディアが安倍首相のこの東南アジア訪問で最も注目したのは、首相が発表を予定していた「日本外交の新たな5原則」の演説だったようである。
ただしこの演説は語られることがなかった。アルジェリアでのテロ事件で首相は日程を短縮して、この演説を述べることなく、帰国したからである。
安倍首相は訪問先であるインドネシアの首都ジャカルタで1月18日、「開かれた海の恵み―日本外交の新たな5原則」と題する主要政策演説をする予定だった。演説は中止となってしまったが、その内容が首相官邸サイトなどで公表された。
その演説の内容を米国大手紙のウォールストリート・ジャーナルが取り上げて、詳しく報道した。1月22日付の記事では「安倍首相の失われた政策演説での安倍ドクトリンでは米国が中心」という見出しで、同首相の新しい外交政策の要点を伝えていた。