高齢化に加速度がついている日本では、行政サービスに頼っていたら、間に合わないし国民が負担するコストもバカ高くなる。ならば地域の住民が自分たちでできることは自分たちでやろう――。そう考えた人が現れた。
「国が何かをしてくれる」という気持ちが日本をダメにする
長野県東御市で「宅幼老所おひさま」を運営する吉田周平さんである。
空き家になっていた民家を借り上げて手を加え、手作りのデイサービスを2008年から始めた。食事や入浴に困っている要介護のお年寄りの面倒を見たり、介護は必要ないが話し相手がほしいというお年寄りが集まって日中、茶のみ話ができる場所を提供している。
自分で歩いて来られないお年寄りには市内の人なら無料の送迎サービスも行っている。ここが面白いのはお年寄りだけではなく、共働きで小さな子供を預ける場所がない夫婦のために、幼い子供たちも預かってくれることだ。
「定年退職して田舎に戻ったら、東京では肌身に感じることがあまりないような日本の問題が見えてきたんです。日本の高齢化のスピードでは、行政に頼っていたら何も解決できないと思いました」と吉田さんは言う。
そこで、自分たちでできることは自分たちでやろう。皮肉なことだが幸いにも古く開発された住宅地には空き家がいっぱいある。そこを利用すれば一石二鳥だと考えた。
いまでは日本全国から見学者が絶えないという。しかし、ここまで来るまでにいくつもの乗り越えなければならない高いハードルがあった。
それらについては、以下のインタビューをお読みいただきたいが、吉田さんが言葉を失った“事件”があった。別に大きなことではない。しかし、日本が抱える本当に本質的な問題だ。
施設を見学に来たあるお年寄りから「私たちは税金を払っているんだから、こういったことは行政に任せておくべきだ」と言われたというのである。
確かに税金は払っている。しかし、政府の税収は減る一方で少子高齢化のために支出は膨らむ一方。目の前にある当たり前の現実がどうも見えていないらしい。しかし、これは恐らくそのご老人だけの問題ではないだろう。
日本人の多くが相変わらず、国に期待しているのではないか。日本が本当に再生するには、その意識改革がまず必要ではないかと思う。それでは吉田さんのインタビューをどうぞ。