11月8日、タイ進出50周年記念式典を終えたトヨタ自動車の豊田章男社長は、翌9日早朝には定員が10人ほどのプライベートジェット機中にいた。インドネシアの首都ジャカルタへ向かうためである。10日午前10時半から、スシロ・バンバン・ユドヨノ大統領に謁見する約束を取りつけていた。
過去40年分の半分を今後5年間に投資
ユドヨノ大統領に会うに当たり、豊田社長が“プレゼント”として用意していたのは、インドネシアに進出しているトヨタグループ各社で今後5年間に総額13兆ルピア(約1100億円)の投資を行うというものだった。
5年間で1100億円というのは大した投資ではないように見えるかもしれないが、インドネシアに進出した40年前からの累積投資はトヨタグループ全体で27兆ルピア(約2250億円)ほど。
つまり、これからの5年間でいままで40年間分の半分を投資しようというのである。インドネシアに対するトヨタグループの意気込みを示したと言っていい。
さらに、ユドヨノ大統領との謁見では、豊田社長だけでなくインドネシアに進出しているトヨタグループ各社のトップをあえて日本から連れて行った。
トヨタ車体の網岡卓二社長、豊田通商の加留部淳社長、アイシン精機の藤森文雄社長、デンソーの加藤宣明社長、ダイハツ工業の伊奈功一社長の5人である。
タイ同様にインドネシアの自動車産業も絶対に韓国や欧米勢には渡さないというトヨタの本気度を示したと言える。現在、インドネシアの日本車シェアはタイの90%を超え、95%と日本本国よりも高い。
投資する13兆ルピアの内訳はほとんど公表していないが、代表的なものはトヨタの第2工場建設に5兆ルピア、デンソーが1兆400億ルピア、ダイハツが研究開発拠点を新たに作る費用として2兆ルピアなどが挙げられる。
インドネシアと言えば、「キジャン」と呼ばれるインドネシア専用モデルを古くから投入したことでトヨタが同国の市場シェアを大きく伸ばしたことで知られる。