経営力がまぶしい日本の市町村50選(3)
北海道ニセコ町の隣にある倶知安町(くっちゃんちょう)は、冬になると町の様子が一変する。外国人の数が急増するからだ。とりわけ同町の比羅夫(ひらふ)地区は、日本人よりも白人の方が多いのではないかと思うほど。
ここには良質の温泉もありニセコスキー場の中でも最も雄大なスロープを楽しめるとあって、オーストラリア人が住み着き、日本よりも海外で有名になった。
そして、遊び上手のオーストラリア人は、最近、倶知安の夏の自然にも目をつけた。ラフティングと呼ばれる川下りである。
倶知安の福島世二町長は「どうして、こういう遊びを日本人は思いつかないんだろうね。目の前にはラフティングにぴったりの川があるのに・・・」と首を傾げるのだが、日本人は遊びが下手な民族ではないかとつくづく思う。
勤勉すぎて遊ぶことにどうしても罪悪感が生じてしまうのだろうか。それはともかく、ラフティングの人気が急上昇中で、日本全国から修学旅行生が夏によく来るようになったという。
おかげで、それまで冬だけのリゾート地だった倶知安がオールシーズン型に変貌しつつある。比羅夫地区の旧温泉街は次々と新しい施設に生まれ変わりつつあり、あと数年もしたら、古い日本の温泉街のイメージは全くなくなってしまうのだろう。
オーストラリア人の影響で、香港やシンガポール、マレーシアなどのアジア資本も続々と倶知安にやって来ており、彼らが建てているコンドミニアムでは、坪単価が300万円に達するものもあるという。
東京都心の高級マンションなみの価格である。倶知安の比羅夫地区は、デフレの日本とは一線を画し、急成長を続けるアジア標準となっているかのようだ。
日本の豊かさと素晴らしさを日本人が一番分かっていない。安全でおいしい食べ物と豊かな自然、温泉。日本人が自覚する以上に海外からの評価は高い。日本の地方と世界が結びつくと日本人だけでは思いもつかない発展を始めることを倶知安町は教えてくれている気がする。
外国人客数が10年弱で45倍に急増した俱知安町
川嶋 倶知安はオーストラリアなど海外からのスキー客が多いということで、非常に有名になりました。最近は夏も含めて観光に力を入れていらっしゃいますね。
福島 倶知安は地の利を得たのかなという感じがします。ニセコ地区とよく言われますが、特に外国人が多いのは倶知安の比羅夫です。比羅夫というのは「日本書紀」に出てくる阿倍比羅夫(あべのひらふ)から出た地名なんですよ。
オーストラリアと日本の時差はマイナス1時間からプラス1時間です。カナダのウィスラーだと日付変更線を越えなければならない。オーストラリアの人は、だったらウィスラーよりも比羅夫のほうがいいじゃないかと。
外国人客が急に増え出したのはアメリカの9.11同時多発テロの翌年あたりからです。そこで、表示や案内、パンフレットなどを英語化したり、町ぐるみで取り組みました。
冬はもう日本じゃないみたいに外国人が多いですよ。外国人宿泊者数(延数)は、平成13(2001)年度に年間4000人程度だったものが、平成21(2009)年度は16万7000人。22(2010)年度は18万7000人にまでなりました。
昨年は東日本大震災の影響で落ち込みましたが、徐々に震災前の水準に戻ってきています。また、今年の冬の予約は非常に好調ですね。