「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」とは、いまの野田佳彦首相にぴったりの言葉ではないだろうか。国会の党首討論会で見せた覚悟は、ほかの党首を圧倒するものだった。筆坂秀世さんが「憲政史上最高の解散宣言」で書いている通り、受けて立った自民党の安倍晋三総裁の動揺ぶりは誰の目にも明らかだった。
野田首相の覚悟に右往左往の野党党首
「国会議員の定数削減をやり抜きましょうよ」と捨て身で迫る野田首相に、安倍総裁だけでなく野党の党首たちは覚悟のなさをテレビの前にさらけ出したように見受けられた。
日本国民はこの国を変えてほしい、中国ほどはひどくないけれども既得権益者の声に押されて成長戦略を描けない日本から脱却してほしい、そう願う国民の声が受け入れられて3年前に政権交代が実現した。
しかし、生まれながらに能天気な鳩山由紀夫元首相と、自分のことしか考えない菅直人前首相の見事なリーダーシップによって、その期待は完全に裏切られ、当然のように民主党政権は沈没した。
捨て身の覚悟がないリーダーに、国民に痛みを強いる改革などできるはずがないのだ。
その意味で、遅すぎたとはいえ野田首相が最後に見せた覚悟は少なからず国民の共感を呼んだことは間違いない。
逆に、野田首相の「やりましょうよ」に曖昧な返答しかできない党首たちに、胆力のなさを見た人が多いはずである。
11月16日に解散された衆院。12月16日の選挙は、私たちの地元で誰を選ぶかよりも、その先にある日本のリーダーを誰にするかの極めて大切な選挙になる。
言葉は過激で勇ましく志がたとえ高くとも、胆力のないリーダーには結局何もできないことを私たちは政権交代で学んだ。ここで同じ過ちを繰り返すようなことがあれば、日本は衰退を加速させる以外に道はなくなる。
民主党に失望したから消去法で自民党に。恐らく自民党の議員さんたちはそのような淡い期待を抱いている人も少なくないだろうが、それは全くの見当違いである。胆力のないリーダーにいまの日本は任せられない。