「依法服兵役是公民的栄誉義務」(法に基づく服役は国民の栄誉ある義務)

 そんなスローガンが書かれた横断幕が、上海市内の大学構内にも掲げられた。

 中国人民解放軍(以下、人民解放軍)は毎年定期的に募集を行っている。今年はさらに“賢い知識青年”の比率を高めようと力を入れており、特に大学生の入隊に期待している模様だ。

「兵役は栄誉ある義務」を訴える横断幕

 中国には兵役の義務がある。「中華人民共和国憲法」第55条は「祖国を防衛し、侵略に抵抗することは一人ひとりの国民的神聖な職務である」と謳っている(ただし実際には、個人の志願に委ねられており、韓国のような厳格な徴兵はない)。

 「中華人民共和国兵役法」(以下、兵役法)第12条によれば、満18~22歳(高等教育機関での学習者は24歳まで延長)の者が徴兵される、とある。つまり現在は、1988~1994年生まれである「80后(80年代生まれ)の末期と90后(90年代生まれ)の前半」がその対象となる。

 人民解放軍は人員を派遣し、中国各地の大学を訪問し説明会を行うなどして、大学生をかき集める。だが、その歩留まりが思わしくない。中国のニュースサイト「人民網」によれば、2011年は歩留まりの低さが目立った年だったという。

 山東省と言えば、全国の10分の1に相当する新兵を創出する一大拠点。裏を返せば多くの貧農を抱えているというわけなのだが、ついに昨年は人員が計画の数に満たず、2度も募集キャンペーンを繰り返した。

 その理由はいくつかある。出生率の低下がその1つだ。90年代生まれは、中国の第3次ベビーブーム(1985~1990年)を終えた後の世代で、その出生率低下は大学受験者数などにも影響が表れるほど。山東省でもまさしく新兵募集を巡って90年代の出生率低下に頭を悩ましている。

 また、かつての貧農は、国や地方政府から支給される手当を目当てに息子を兵役に送り込んだものだったが、今では就職先や学業の場に恵まれ、息子に軍隊生活の苦労をさせずとも、そこそこの生活ができるようになった。