田中真紀子文部科学相が3つの大学の新設を認可しなかった事件は、結果的には彼女が処分を白紙撤回して決着したようだ。大臣の唐突な行動は関係者を混乱させたが、その問題提起は重い。
「戦後たくさんの大学が創られてきたが、大学教育の質が低下している。それが就職できない理由の1つになっている」という彼女の指摘に胸を張って反論できる大学関係者はいないだろう。
学生が減るのに増え続ける大学
日本の4年制大学は現在783校。1992年には523校だったが、90年代は「団塊ジュニア」の増加で学生数が増え続けた。学生数は2000年代には減少に転じたが、小泉内閣のとき大学の設置基準を緩和したため、図1のように大学は増え続けた。
このため最近は大学の定員と学生数がほとんど同じになり、今春の入学試験では私立大学の46%が定員割れになった。大学を選ばなければ、ほぼ全員が入学できる「大学全入時代」である。
このように大学生の量が増えると同時に、質は低下した。当コラムでも指摘したように、2割以上が卒業しても就職も進学もできない「無業者」になる。若年失業率が高いことがよく問題になるが、求人倍率は1を超えており、中小企業の求人倍率は4倍以上だ。
大学生は増えたが、ホワイトカラーの需要はIT化で減っている。多くの大学生には高卒の職場しかないが、学生が中小企業をいやがるため、ミスマッチが起きているのだ。
こういう状況で大学を増やし続けると、経営の破綻する大学が出てくる。群馬県高崎市の創造学園大学は経営が悪化し、文科省は2013年3月までに解散命令を出す方針だ。多くの大学で合併も進んでおり、これから「大学倒産時代」がやってくることは間違いない。