トヨタ自動車がタイに進出して50周年を迎え、11月8日にはバンコク市内で大々的な記念式典が開催された。タイ政府の要人ら1800人が集まったこの式典では、日本ではほとんど見られない派手な演出のなか、豊田章男社長が「近い将来にタイでの生産台数を100万台に引き上げる」と英語で高らかに宣言した。
驚愕の伸び率、タイの新車市場
何しろタイの自動車販売は驚異的な伸びを記録している。
年間の販売台数が50万台付近で推移することが多かったタイの販売台数は、2008年に60万台を超え、2009年にはリーマンショックの影響で54万9000台と少し減少したものの、そこからの躍進が目覚しい。
2010年には70万台の大台を通過していきなり80万台市場へと拡大、2011年は日本の大震災とタイの大洪水という2大パンチに見舞われながらもほぼ80万台市場を維持。
今年は1~9月までですでに99万9000台を販売。「このままの勢いが続けば140万台市場になることはほぼ確実」とトヨタ・モーター・タイランド(TMT)の棚田京一社長は言う。
「このままの勢いと言ったけれど、勢いはどんどん増しているというのが現状です。作るそばから売れてしまうので、生産部門が大変です」
タイでの本来の能力は3つの工場を合わせて年間67万台なのに、実際には88万台体制で生産を続けており、20万台以上も能力を超えていることになる。
能力を超える分は、残業や休日出勤でなんとかやりくりしているという。
今年4月にバンコクとその周辺の県では最低賃金が39%上がった。とはいえ、まだまだ賃金の安いタイでは、賃金が増える休日出勤や残業は好まれる傾向にある。
また、国民の気質が柔和で、中国などのように労働問題が経営者を悩ますということは少ない。しかし、「それでも休みが少ない状態が続きすぎるとさすがに心配になります」と棚田社長は話す。