すでに旧聞に属する感がありますが、いったい何だったのでしょう、一瞬の騒ぎではあったにせよ、あまりに恥ずかしい「iPS細胞移植」詐称の誤報騒ぎ。

 東京大学も一定範囲ですが関わって起きてしまった、この情けなくもアホくさい問題について、再発防止を含む観点から、2つの異なる入り口から検討してみたいと思います。今回は第1の入り口、騒ぎを起こした本人である森口尚史という人から考えてみます。

森口という人の横顔

 この方の画像などを報道で見て、プロフィールその他を聞いて最初にびっくりしたのは、個人的なことなのですが1964年生まれだそうで、私と同い年と知ってびっくりしてしまいました。

 いや、人の外見には個人差がありますから、元同級生でもとても若く見える人もいれば孫のいる人もいます。

 現在47~48歳の私たちの年代はいかにも「中年」ではあるのですが、この森口さん、広い大学の中で一切面識その他はありませんが、同年でこんな感じの中年オヤジもいるんだ、なんともなぁ・・・というのが、まあ、どうでもいいかもしれませんが、最初に感じたことでありました。

 ネットの情報によると、この方、1964年に奈良県でお生まれになり、医学部を志望して6年浪人されたのち東京医科歯科大学保険衛生学科に入学、看護学専攻の4年制を1993年に卒業されたということですから、29歳で看護師の資格を取られたということと思います。

 どういう経緯か分かりませんが、6年も浪人させてもらえるというのは、親御さんに経済的な余力があったということなのかもしれません。

 強く医師を希望していたのに結果的には看護師になった。そこで地道に看護師の仕事に就いていれば、また違う展開だったのだと思いますが、彼は違う経歴を歩んだようです。その背景には日本の大学の「大学院重点化」というトレンドがあったように思われます。

大学院重点化が生み出したキャリア

 医大の保険衛生学科看護学コースというものを実はよく認識し切っていないのですが、察するに本来は看護師を養成する機関であったのだと思います。昔は「看護学校」として「看護婦さん」を育てていたと思います。

 様々な診療科目での男性看護師のニーズ、男女雇用機会均等法などなどの追い風もあったのでしょう、4年制大学の扱いとなって、現行のシステムになっているのだと思います。その途中で「大学の大学院重点化」という現象が発生してきます。

 これはどういうことか?

 大学は、通常の医学科も、保険衛生学科も、当然ながら教える人々がいます。教授とか助教授とか、その専門の先生ということです。

 この方々は、大学ですから「研究職」でもある、という立場が(本来は)あるわけですね。まあこれは、医学部など「臨床」という大変な現場があるので、必ずしも研究だ何だとばかり言っていられないとも思うのですが・・・。